障害児通う「幼児訓練会」今後も必要 横浜で双子の親が手記

2025年0319 福祉新聞編集部
幼児訓練会の間、保護者と話し合う長谷川さん(左端)

横浜市内の未就学の障害児が通う「幼児訓練会」が曲がり角に来ている。市の独自事業として約50年前に始まったが、利用するこどもが減り、運営が難しくなってきた。そんな中、幼児訓練会に通って成人したこどもの親が、ほかの親子の参考になればと昨年末に手記を発行。幼児訓練会の存在意義をアピールする形になった。

「魔法のような成長がうれしかった」。同市栄区の障害児・者親の会「あしたばの会」の会長、長谷川桂子さんは著書「わが家の双子はASD」(中央法規出版)にこう書いた。

自閉症(ASD)で知的障害のある息子ツヨさん(22)が2歳半で幼児訓練会に通い始めて4カ月もすると、それまでの大泣きがうそのように楽しんで参加したというのだ。

発語はなく、親が目を離すとどこかに走ってしまうツヨさん。姉のコトさん(22)は中学生の頃、知的障害のない自閉症と判明した。タイプの異なる双子の日常を幼児訓練会で知ったブログに書き続け、満を持して今回の手記を出した。

自信と安心感が土台

幼児訓練会について「ベテランのスタッフに手厚く見てもらえたので、本人が自信と安心感を持つことができた。その後、世界を広げるうえで土台になった」と長谷川さん。現在、ツヨさんが通う生活介護事業所も「ツヨさんは場に慣れる能力がある」とみている。

幼児訓練会は障害児・者の親の会が運営する通いの場で、10人超のこどもが週1~2日、生活介護事業所などの入った市独自の「地域活動ホーム」に集う。

福祉や保育に携わっていた市民が「協力者」として約3時間、一緒に室内遊びや散歩をしてお弁当を食べる。その間、保護者同士が交流し、学び合うこと、地域に溶け込んでいくことが特長だ。

ピーク時の3割に

1972年に始まり、翌年から市が助成を開始。運営をサポートする市社会福祉協議会障害者支援センターによると、現在、学齢期を含む「地域訓練会」は41団体ある。登録するこどもは398人で、ピークだった87年の3割に減った。

市の助成要件を満たせない訓練会もあったが、市は昨年度、その要件を緩和して助成を継続した。それでも今後の見通しは不透明だ。

訓練会に40年超関わってきたセンターの瀧澤久美子さんは「訓練会は障害児とその親が、対等な立場の第三者と関係を結べる居場所だ」と指摘。50年前に比べ法制度が整い、複雑になった今こそそんな居場所が重要だとみている。

  • 購読のお申し込みはこちら

おすすめコンテンツ