障害者施設待機者の実態解明へ 厚労省「定義調べる」

2024年0803 福祉新聞編集部

障害者の入所施設やグループホーム(GH)の空きが不足し、待機状態にある人が全国にいる問題について、武見敬三厚生労働大臣は7月23日の会見で、国として待機者の実態解明を進める考えを示した。

武見大臣は「重度の知的障害のある人が親の高齢化に伴い、住まいに不安を抱えることは決して望ましいことではない」と述べ、今年度始めた「入所施設のあり方に関する調査研究」で自治体ごとの待機者の定義や把握状況を調べるとした。

NHKが47都道府県と全体の4割に当たる696市区町村から回答を得た調査で、施設とGHの待機者が延べ2万2000人いると判明したことを受け、国の対応を問われて答弁した。

待機者の中には1人で複数の施設を申し込む例や、将来に備えて申し込む例などがあり、必要とする度合いは必ずしも同じではない。そのため、厚労省は定義や把握の方法を整理する考えだ。

将来を悲観、息子殺害

施設やGH不足により、困り果てた家族が障害者を殺害する事件は後を絶たない。

7月4日、千葉県長生村で重度の知的障害のある男性(44)が父親(77)に殺害された事件をめぐっては、この男性が5月末まで神奈川県内に住み、県立の障害者支援施設「中井やまゆり園」に1~2泊する短期入所を定期利用していたことが分かった。

同園やGHへの入所を希望しながらも断られた末、この家族は千葉に転居。夜間も動きまわる男性の介護に疲れ果てた父親が将来を悲観したという。

神奈川県は県内の施設やGHの待機者数を公表しておらず、短期入所事業所の稼働率も把握していない。ニーズとサービスの提供実績が不明瞭な中、痛ましい事件が起きた。

神奈川県が検証

事態を重くみた県は7月29日、この家族に必要な支援を行えていたのか検証する方針を発表した。第三者の意見も聞きながら10月に検証結果を公表するとしている。