障害報酬改定で1人暮らし支援を強化 GH退居後の定着促す

2023年1030 福祉新聞編集部

厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、グループホーム(GH)から1人暮らしに移ることを望む人への支援を強化する。現在の「自立生活支援加算」はGH退居後の支援1回を限度に算定できるが、今回の改定では退居後の生活が定着するよう継続して支えることを促す。

 

1人暮らし希望者だけを受け入れ、有期限で支えるタイプのGHはユニット単位の「移行支援住居」(7人以下)として新たな加算で評価する。現在の三つの報酬類型のうち介護サービス包括型と外部サービス利用型で認める。第4の報酬類型は設けない。

 

「移行支援住居」では入居前から本人にサービス内容を説明し、1人暮らしに向けて計画的に支援する。サービス管理責任者は社会福祉士や精神保健福祉士とする。利用者同士のグループワークや所定の研修を受けた障害者によるピアサポートも推進する。

 

10月23日の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」に示し、アドバイザーから大筋で賛同を得た。1人暮らしを望む人への支援は、昨年12月の法改正でGHの定義に加わった。それに伴って新しい報酬類型を設けることには審議会で反対意見が上がっていた。

 

このほかGHの報酬はサービス提供時間に応じたものに改める。GHで暮らす重度の障害者が個人単位でヘルパーを利用できる特例措置は23年度末までだが、これを延長する。

 

GHをめぐっては事業所が急増する半面、支援の質の低下が問題視されることも多いことから、今回の改定では介護保険のGHにならって外部の目を定期的に入れる仕組みを導入する方針だ。

 

一方、事業所が一定数を超えた場合に、新規開設の申請があっても自治体が指定しないことを可能とする「総量規制」をGHに導入することについては、複数のアドバイザーが反対した。

行動障害に集中支援

自閉症などの障害特性により自傷他害の著しい「強度行動障害」の人への対応も重視する。GHでの受け入れを促すため、障害者が環境の変化に適応できるよう職員が支えるための加算を設ける。

 

GHなどで状態が悪化した障害者の環境調整を専門人材が手助けする「集中的支援」も導入する。(1)専門人材がGHなどを訪ねる(2)障害者が自宅から入所施設などに転居し、その転居先に専門人材が訪ねる――の2類型を想定する。

障害児も小規模ケア

都道府県で広域的に対応することとし、専門人材の派遣費用などを報酬設定する。

 

強度行動障害は幼少期の関わりにより発生を抑えられるとされていることから、障害児のサービスもそうした視点で見直す。18日の報酬改定検討チームにその概略を示した。

 

障害児入所施設は強度行動障害のあるこどもを支援する際の現行の加算を拡充し、受け入れを促す。施設からの退所や施設定員の削減も進めるほか、施設での小規模ケアは児童養護施設に準じて改善を図る。

保育所等訪問は支援時間に下限

保育所や幼稚園を障害福祉の専門家が訪ね、発達の気になる子の様子を観察して保育士や保護者に助言する障害福祉サービス「保育所等訪問支援」のテコ入れも改定の目玉だ。

 

現在は訪問先での支援内容や時間を細かくルール化されていないため、短時間の巡回で報酬を得るといった不適切な例もある。今回の改定では支援時間の下限を定め、支援結果の評価を公表するよう義務付ける。強度行動障害対応の専門人材が支援した場合の加算も設ける。

 

未就学児が通う児童発達支援、就学児が通う放課後等デイサービスについても、強度行動障害のあるこどもを支援した場合の現行の加算を拡充する。

 

両サービスの基本報酬は、支援時間による区分が不十分だとの指摘があるため、時間の長短が適切に評価されるよう区分を改める。

 

また、障害の有無にかかわらず生活を共にする「インクルージョン(包摂)」を進める観点から、保育所との併行通園や保育所への移行を促す加算も拡充する方針だ。