カナダで学んだソーシャルワーカーの姿勢〈コラム一草一味〉

2025年0607 福祉新聞編集部

草間吉夫 新島学園短期大学 教授

筆者はかつて日本社会事業大学の高橋重宏元学長から勧められ、カナダ・トロントで半年間、社会的養護対象者や経験者に自立支援を行うパーク(Parc)で、インターンをしたことがある。パークは、教育学修士を有するアーウイン・エルマン氏が施設長を務め、彼とユースの関わり方は収穫が多かった。彼から学んだソーシャルワーカー(SW)の姿勢を述べたい。

一つ目は、リスペクトする関わり方だ。向き合う相手はユースであるが、一人の人間として尊厳を持って個々を尊重していた。ユースの発言、思いや感情に真摯に耳を傾け、彼らが出した提案を誠実に受け止め対応していたことは、深く印象に残っている。

二つ目は、ユースのパートナーとしての関わり方だ。ユースが自ら設定した自立活動の目標・計画・実行に対して、よく耳を傾け共に歩んでいく良き仲間に徹していたこと、根気強く関わっていた姿はとても目に焼き付いている。彼はユースからの信頼が厚かった。

三つ目は、ファシリテートを重視した関わり方だ。彼が、自分を前面に押し出さず、考えを一方的に押し付けることもなく、常に立ち位置を後方に取り、ユースを見守りながら、必要な助言と支援を伴走的に行っていたことは、鮮明に記憶している。

四つ目は、ソーシャルアクションを後押しする関わり方だ。テレビをはじめ新聞やラジオ、専門職研修会などで、ユースが自らの経験や思いを語る「スピークアウト」を積極的に行っていた。一般社会に対して、社会的養護の実情を知ってもらう機会となり、政治家、行政関係者や児童福祉制度策定に影響を与えていたのは、驚きであった。ユースにニーズを実現する手段として、社会的活動を実践させていたことは特筆に値する。

リスペクト、パートナー、ファシリテート、ソーシャルアクションの四つを彼から特に学んだ。現在でも有用だろう。

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