障害として「吃音」への配慮を〈コラム一草一味〉

2025年0719 福祉新聞編集部

末光茂 社会福祉法人旭川荘 前理事長

とある新聞で大学生の就職活動たけなわといった記事を目にして、同じ日本のことかと驚いています。福祉分野の採用試験は秋口からが本番です。福祉系大学では、夏休みをはさむ時期に現場実習が集中していて、それが終わらないことには、就職活動に取り掛かれません。

それに比べて、一般企業などを目指す学生は早々と就職活動に集中します。それも今まで4年生だったのが、今回の記事は3年生です。4年生でも就職内定の後は、本来の勉学がおろそかになりがちなのに、3年生だと残りの1年半はどうなるのでしょう。

他方で、就職面接に苦闘する「吃音」学生のことが気掛かりです。吃音への理解は一般に不十分です。この私も十数年前までは、本人が努力すれば克服できるものと考えていました。

確かに多くの人は小学低学年までに克服できます。ところが一部の人はそうではありません。

青年になった後も吃音を抱え悩み続けています。対人場面では、なぜかスムーズに言葉が出てこない。面接試験では特に顕著になり、本当の能力を表現できないまま不合格にされがちです。

過去に国の障害者総合支援法検討会の「障害の定義」部会(堂本暁子部会長)で、副部会長として「吃音を発達障害に加えてほしい」という「全国言友会連絡協議会」の要望を紹介したことから、ずっと気になっていました。

最近、岡山の「第1回吃音親子カフェ」に参加しました。こどもたちの世話をし、父母と共に体験を正直に披露する吃音の若者3人には、頭が下がりました。

ペーパーテスト偏重の大学入試に対して、就職面接の重要性はよく分かります。その際、あいさつや話し始めに時間がかかるなどの吃音の特性を理解して、十分に時間を取るとかオンラインなどの「合理的配慮」を願いたい。

ゴルフのハンディは年齢や経験、過去のスコアなどを考慮して持ち点を決め、フェアにプレーするルールです。それに通じる視点の共有がほしいものです。

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