インフォーマルな地域づくり〈コラム一草一味〉
2025年11月04日 福祉新聞編集部
                                                                                                                                                                                    蒲原基道 日本社会事業大学 社会福祉研修センター 客員教授
介護を要する高齢者の支援については、以前から「地域包括ケアシステム」として、介護、医療、住まい、生活支援、介護予防の五つの要素からなるシステムの推進が取り組まれている。他方、障害者支援の分野でも、最近、精神障害者支援の分野で「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」が進められている。また、障害者福祉制度改正の厚生労働省資料にも、障害福祉、医療、住まいのほか、「地域の助け合い」といったワードが並んでおり、高齢者の地域包括ケアを示す従来から使われている資料と類似している。
こうした地域包括ケアにおける助け合いなどのインフォーマルな地域づくりを進めるため、高齢分野では、生活支援体制コーディネーターの仕組みがある。障害分野では、正面から使える仕組みがないものの、工夫すれば使えそうな仕組みもある。例えば「基幹型相談支援センター」の中核業務の一つに、自立支援協議会の運営への関与を通じた「地域づくり」がある。地域の関係機関や団体の連携を促進する中で、助け合いなどの仕組みづくりを支援できる。また、地域活動支援センター事業についても、工夫すれば、居場所づくりなどを支援することができそうだ。
障害児支援の分野では「地域のこども達の集まるさまざまな場におけるインクルージョンの推進(地域障害児支援体制強化事業)」がある。これはピアノ教室やダンスなどの習い事の場で、障害の有無にかかわらず、こどもが共に過ごし、成長できる地域づくりを支援する仕組みである。こちらは、より直接的に地域づくりを支援できそうである。ここで大事なことは、単に、助け合いという形だけなく、ピアノ教室のような地域に密着している民間企業も大事な地域のリソースとしている点である。
さらに、今後は、分野横断的な対応として、重層的支援体制整備事業の「地域づくり」の活用も考えられる。これらの仕組みをうまく活用して、公的サービスと併せた、インフォーマルな地域による支援が厚くなることを期待したい。

                                                                
                                                                
                                                                
                                                                
                                                                
                                                                