医療行為できる新資格を〈コラム一草一味〉

2025年0920 福祉新聞編集部

結城康博 淑徳大学 教授

介護現場では医療行為を伴う要介護者が増えている。主に胃ろう管理▽喀痰吸引▽褥瘡・創傷の処置▽膀胱留置カテーテルの管理▽インスリン注射▽人工透析――などがある。

現行では「経管栄養の管理」「喀痰吸引」は医療行為としながらも「医療的ケア」として位置付けられ、一定の条件下で介護職員も対応可能となっている。しかし、介護福祉士や介護職員などが所属する事業者が「登録喀痰吸引等事業者」ではない。もしくは介護人材不足といった背景から、医療的ケアが必要な要介護者の受け入れが難しい事業所も多い。

今後、人口減少社会も相まって看護職員が充分に確保・定着できず、要介護者らの介護生活が危ぶまれるに違いない。

そこで、現行の介護福祉士養成課程を重厚にして、一定の医療行為が可能となる新たな「(仮)療養介護福祉士」といった資格制度を創設してはどうか。そうなれば、介護資格が「名称独占」ではなく「業務独占」として位置付けられる。

厚生労働省のデータによると、准看護師と介護職員の毎月の賃金には、平均4万5000円の差がある。国家資格である介護福祉士と比べても、国家資格でない准看護師のほうが好条件だ。

昨今、介護報酬の大幅アップが実現されず、他産業との格差が広がっている。その理由の一つが、介護施設では無資格者でも「介護」業務に従事可能で、専門職としての位置付けが社会的に評価されにくいことだ。

そこで、医療行為を伴うケアである療養も、介護の一部と据えて、医師の指示の下で医療行為が一定程度可能な介護資格を創設するのである。そうなれば、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの看護師不足対策にも有効だ。そして、准看護師レベルまでの賃上げも財政当局に求めることが可能となり、大幅な介護報酬アップの実現にもつながるだろう。

2040年には高齢化がさらに進み、介護職員の不足が今以上に深刻な事態となる。早急に抜本的な見直しがなされないと、介護難民続出となるに違いない。

2 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る