視覚障害者が補助具で自筆投票 日本点字図書館が販売、都知事選でも配備
2024年07月05日 福祉新聞編集部日本点字図書館(東京)は、選挙の投票用紙に候補者名を書く際、どこが記入欄か分かりやすいよう枠取りした補助具の販売を始めた。主に視覚障害者が使うことを想定している。「自分で書いて投票したい」という思いを支えるもので、7日の都知事選で本格デビューする。
補助具は定期券ケースのような形で、素材はポリプロピレン樹脂。投票用紙の記入欄の部分だけがくり抜かれている。目が不自由でもこの枠を触れば記入欄の位置が分かるようになる。点字投票や代理投票という仕組みもあるが、「そもそも点字を使わない」「誰に投票するか代理人に知られたくない」という視覚障害者にとって、自筆で投票できる意義は大きい。
都知事選でデビュー
同図書館によると、4月に販売を始めて6月8日までに約2700枚売れ、都内では15市区の選挙管理委員会(選管)がまとめ買いした。同2日に区長選挙があった港区は100枚購入。都知事選では合計48の投票所に2枚ずつ配備する。「拡大鏡や老眼鏡と並べてホームページでも周知した」という。
同図書館が製作・販売を始めた背景には、隣の神奈川県での動きがあった。
昨年5月、全盲の柏木容子さん(厚木市)が知人から譲り受けた手作りの補助具を持参して同市選管に相談したところ、7月の市議選で全投票所に配備された。
その結果、少なくとも7人が補助具を使って自筆投票したことが判明。これに着目した県の選管は今年4月以降、県内33の市町村すべてに透明のケースを計2035枚配った。
記名部分をくり抜く作業は市町村が行うものの、全県的に使う土壌が整ったことについて柏木さんは「今まで投票を諦めていた人も多いので、補助具の導入はうれしい」と話す。
当事者に知らせたい
この動きは都内にも伝わった。「今年に入り、23区の間で補助具が必要だという意識が急に広がった」と話すのは、同図書館職員の内藤牧さん。手作りではない選挙備品の標準モデルが求められ、急ピッチで開発した。
試作品を使った同図書館の利用者らは「枠内にきちんと記名できると気分がいい」と高く評価。一方、「こうした道具があることを当事者に知らせるのが大事で、一番の課題だ」と口をそろえる。
補助具は1枚429円(税込み)。30枚以上買う場合は割り引きされる。同図書館の公式サイトから注文できる。