障害者が名物そば伝承 栽培、製麺し駅ナカで提供(徳島)
2023年09月06日 福祉新聞編集部JR徳島駅構内にあるそば店「麺家れもん徳島駅」。看板メニューはひきたて、打ちたて、ゆでたてが自慢の「祖い谷や仕立てそば」(550円)。障害者がそばの栽培、製麺、販売まで関わっている。麺は太く短く、ほどよい弾力がある。そばの風味が豊かで素朴さも感じるその味は「駅そばベスト10」で全国5位に選ばれた(2020年12月、朝日新聞掲載)。
運営するのは社会福祉法人カリヨン(田岡博明理事長)の就労継続支援B型事業所「れもん徳島」。地元に愛されたJR阿波池田駅構内の「駅そば」と、山間部の過疎化でそば農家が減り、名物の祖谷地方のそばがなくならないよう、法人で徳島の食文化を伝承するため、01年12月に始めた。
そばは徳島市内から車で2時間の東みよし町にある約1000平方メートルの畑で栽培している。夏に種をまいて秋に収穫し、加工場で粗選作業などをして保存する。
一番のこだわりは「その日のそばはその日に作る」。市内の事業所で玄そばを石臼で2回に分けてひき、さらに振るいにかけてそば殻を取り除いたそば粉に水と小麦粉を混ぜてこねて製麺する。これらの作業を営業開始前(現在は午前11時)までに行い、駅構内の店舗に届ける。
また、「売ってほしい」という人がいるほど、だしも好評だ。香川県の伊吹島産のいりこを使用し、苦味のある頭とはらわたを取り、しょうゆなどを加えて作る。深みがあるのにすっきりした味で大半の人が飲み干してしまうという。
そばの一連の作業には、17人の障害者がそれぞれの適性に応じて関わっている。店舗で働く篠原竣太さんは「大きな声で接客することを頑張っている」と言う。
店舗はコロナで休業していたが、昨年10月に営業を再開。また、月に数回、そばや総菜などの移動販売もしており、ここにきてイベントへの出店依頼も増えてきた。
物価高への対応、事業収益の確保など課題はあるが、れもん徳島管理者の藤井愛さんは「やっと再開できたので、まずは店舗の営業を安定させたい。移動販売車で地域にも出向き、多くの人に祖谷仕立てそばを広めたい」と前向きだ。