介護施設内の虐待739件 過去最多を更新〈厚労省調査〉

2023年0116 福祉新聞編集部

 2021年度の介護施設職員による高齢者虐待は739件(前年度比24%増)で、虐待を受けた高齢者は1366人(11%増)おり、いずれも過去最多となったことが12月23日、厚生労働省の調査で分かった。相談・通報件数も2390件(14%増)で最多を更新した。

 

 厚労省は、21年度から介護事業者に虐待防止の委員会設置、研修会開催などを義務付けたこと(3年間の猶予期間あり)で取り組みが進んだこと、自治体がコロナ対策をしながら事実確認のための訪問調査が行えるようになったことを要因に挙げた。

 

 全体の傾向としては前年度とほぼ変わっていない。虐待があったのは特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、認知症グループホームの順に多く、虐待した職員965人(225人増)の8割が介護職だった。内容は「身体的虐待」「心理的虐待」「介護放棄」が多く、全体の24%で身体拘束もあった。虐待理由の上位は「教育・知識・介護技術の問題」「虐待を助長する組織風土」「職員のストレス」だった。

 

 虐待のあった739件のうち、146件は以前にも虐待を起こし、201件は過去に指導などを受けていたため、再発防止も重要課題の一つとされる。

 

 一方、相談・通報者は2713人で、施設職員、管理者、家族・親族の順に多い。自治体が相談・通報を受理した日に事実確認を始めたケースは29%で、4週間以上かかったケースが17%あった。

家庭内虐待死も最多

 家庭内の虐待は1万6426件(5%減)で、過去の推移を見ると高止まり傾向にあるものの、死亡者は37人(12人増)で過去最多となった。死亡原因は「養護者による殺人」「ネグレクトによる致死」が多かった。厚労省は、コロナ禍で通所介護の利用控えなどにより孤立し、家族などの介護疲れやストレスがあったことを要因の一つに挙げた。 

 

 調査は高齢者虐待防止法に基づき07年度に始まった。通報を受けた自治体が事実確認を行った事例などを集計している。

 

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