「地域あんしん生活保障」で身寄りない高齢者を支援〈鯵ヶ沢町社協・青森〉

2025年0707 福祉新聞編集部
高齢者宅へ定期訪問する社協職員(右)

身寄りのない高齢者の支援拡充に向けて、政府が社会福祉法改正の準備を進める中、青森県の鯵ケ沢町社会福祉協議会は、早くから権利擁護センターを立ち上げ、独自に身寄りのない高齢者を支援する「地域あんしん生活保証事業」に取り組んでいる。

「変わりはないですか」。この日、社協職員が定期訪問で訪れたのは、町営住宅に住む80歳代の男性宅。

ペースメーカーを使用しており、服薬も10種類を超える。判断能力があり、意識・会話もはっきりしているが、身寄りがないため数年前から地域あんしん生活保証事業を利用している。

「去年は雪が大変でしたが今年はどうですかね」「庭の草刈りは大変じゃないですか」「食事はどうしていますか」

社協職員は世間話を交えながら、さりげなく体調や日常の困り事を聞く。定期訪問について利用者は「普段話し相手が多くないので助かっています。また来てほしい」と笑顔で話す。1時間弱の訪問時間はあっという間に過ぎた。

地域あんしん生活保証事業は、判断能力はあるが頼れる身寄りがなく、将来の暮らしに不安を抱えている人が対象。2017年度から開始した。

(1)月に一度の定期訪問を基本に、施設入退去時の説明や契約の立ち会い、死後事務などを行う「あんしんサービス」(2)福祉サービスの利用援助や日々の金銭管理などを行う「生活支援サービス」(3)「書類等預かりサービス」――で構成する。

利用料金は月額1000円。死後事務を希望する場合は、葬儀費用や家財処分費用などを計算して、一括または分割で月額料金とは別に預託金を社協に預ける。

社協の井上雅哉事務局長は、事業のきっかけについて「判断能力があり、身寄りのない高齢者が緊急入院すると、多くの場合ケアマネジャーに連絡がいく。ケアマネは病院での契約行為に関わることはできないため、新たな支援策が必要だった」と話す。

隣接する深浦町と連携して2町の事業として立ち上げた。両町合わせて人口は約1万5000人で、年間の相談数は50件ほど。中核機関である鯵ケ沢町社協がケース会議を行っている。現在の利用者は5人。

井上事務局長は「(制度改正があっても)やることは変わらない。社協の使命として、地域に住む人の困り事に寄り添っていきたい」と話した。


鯵ケ沢町社協 2010年2月に権利擁護センターを立ち上げ、独自事業として運用を開始。19年から成年後見制度利用促進事業の委託を同町と深浦町から受け、中核機関としての体制を整備した。