埼玉・入間市でヤングケアラー条例施行 支える環境を整備
2022年07月04日 福祉新聞編集部「ヤングケアラー」の支援に特化した初めての条例が7月1日、埼玉県入間市で施行された。年齢に見合わない負担を負い、学校生活や進路などに支障が出ないよう、ヤングケアラーを早期に発見し、社会全体で支える環境を整備する。
条例ではヤングケアラーの定義のほか、市の責務として施策の推進、保護者や関係機関などとの連携、実態把握を規定。ヤングケアラーが相談しやすい環境の整備、人材の育成も求めている。
保護者は年齢や発達に応じた養育に努めることとし、学校にはヤングケアラーの健康状態などを確認し、支援の必要性の把握に努める役割を規定した。地域住民、関係機関の役割も記されている。
条例施行に伴い、市は既存の「子ども・若者未来応援プラン」にヤングケアラー支援を追加する。小中学校、要保護児童対策地域協議会などでの周知を進める。また、年度内に家事ヘルパー派遣事業を始められるよう検討する。リーフレットを作成して市民に理解を促す。
厚生労働省のヤングケアラーに関する啓発事業のアドバイザーを務める宮崎成悟・一般社団法人ヤングケアラー協会代表理事(32)の話
15歳から昨夏まで難病の母親の介護や家事をしてきた。周りに気を使わせたくない、相談しても何も変わらないという気持ちが強かった。大人になって初めて「ヤングケアラー」という言葉を知り、自分だけではないと思えた。
直ちに支援が必要な子の早期発見は重要。一方、おおむね普通の学校生活を送れており、緊急的な支援を必要としていない子も多い。ただ、数年後は分からないので、長期的に接点を持って関わっていくことが必要。信頼できる大人がそばにいれば困ったときに相談しようと思う。
カウンセリングなど特別感があると萎縮してしまう。例えば、保健室で話しているうちに悩みがポロッと出たりするので、そういう環境をつくっておくことが大事。
現状の支援体制には地域差があり分かりづらい。当法人ではLINE上に、いつでもつながり、自分の地域の支援につながれる窓口を作るために7月中旬にクラウドファンディングを始める(クラウドファンディング特設サイト|ヤングケアラー協会 )。
条例名に「ヤング」と付けば教育、児童の関わりもより明確になるため、条例の意義は大きい。これを契機に本質的な理解が広まることを期待している。