保育所に絵本専門図書館「かたつむりの家」 地域にも無料開放(広島)

2024年0621 福祉新聞編集部
絵本図書館で絵本を楽しむ親子=丘の上福祉会提供

広島市の社会福祉法人丘の上福祉会(西村恵美子理事長)は、運営する保育所の敷地内に絵本専門の木造2階建て図書館を設置している。地域にも開放し、訪れる人は年々増加。定期的に絵本の読み聞かせ会を開くなど地域の子育て拠点としての役割も果たしている。

法人は同市西区内で2保育所を運営しており、2019年度に開所した「もみのき保育園井口園」に併設する形で整備。整備費は園舎と図書館合わせておよそ2億円。

丸みを帯びた外観、2階に上がるためのらせん階段が、カタツムリの殻を連想させることから、図書館名は「かたつむりの家」。本棚には所狭しと絵本が並び、2階には絵本の読み聞かせなどイベントで使うスペースも備える。児童文学者の三浦精子さんが名誉館長を務め、図書館司書の資格を持つ非常勤職員も雇った。

蔵書は3000冊を超える。世界中で読み継がれる「ピーターラビットのおはなし」など海外作品の翻訳版や地元広島にまつわる作品など多様な絵本をそろえる。

19年夏の開館当初、蔵書は1000冊に満たなかったが、寄贈や、広島県共同募金会のテーマ募金で集めた500万円を活用し絵本の購入資金に充てるなどして増やした。

住宅街での保育所建設をめぐり、地域住民と軋轢あつれきが生じる社会問題が頻発する中、「地域に愛される保育所でありたい」と一般に無料開放することを決断。毎週木~土曜、園児が午睡中の午後1~3時に開放し、1人5冊まで2週間借りることができる。加えて、月に1回、地域の子育て世帯を対象にした絵本の読み聞かせ会も開いている。

地元の親子にとどまらず、絵本好きの大人が県外から訪れるなど利用者は増えている。1日当たり5世帯ほどが訪れ、10世帯が利用する日もある。「越してきたばかりで誰とも話す機会がなかった時にこの図書館があってとても助かった」といった声も寄せられたという。

西村理事長は「今後も絵本を増やしていきたい。4月から働く図書館司書に主導してもらい、園児への読み聞かせを一層充実させていきたい。一般の人も気軽に訪れてもらえたら」と話している。