児童手当の所得制限撤廃 関連法案を閣議決定

2024年0224 福祉新聞編集部

政府は16日、子ども・子育て支援法などの一部改正法案を閣議決定した。昨年に決定したこども未来戦略の加速化プラン実行に向け、児童手当の所得制限撤廃など経済的支援の強化などが柱だ。また、新たな財源として支援金制度も盛り込まれている。

 

児童手当は今年12月から支給要件を大幅に緩和。所得制限を撤廃し、期間も中学生から高校生の年代まで拡大する。

 

支給額は0~2歳は1人月1万5000円、3歳~高校生は同じく1万円。第3子以降は月額3万円に増やす。支給回数も年3回から6回とする。

 

さらに育児休業給付を拡充する。両親が14日以上育休を取るなどの条件付きで、最大28日間の実質的な手取り収入が減らないようにする。時短勤務時の新たな給付もつくる。

 

また、妊娠期の負担軽減に向け、給付と相談をセットにした総合的な支援を行う。親が就労要件を満たさなくても保育所に預けられる「こども誰でも通園制度」を創設し、2026年度からの全国展開を目指すことにしている。

 

法案では加速化プラン実現のための新たな財源も注目度が高い。

 

政府は既存の1兆5000億円の倍以上となる3兆6000億円の予算が必要だとしている。不足分の2兆1000億円は、新たに医療保険を通じて企業や国民が拠出する「支援金制度」の創設と歳出改革で賄う。

 

支援金の徴収は創設する26年度は6000億円、27年度は8000億円、28年度は1兆円を見込む。岸田文雄首相は6日の衆院予算委員会で、28年度の負担増は1人月500円弱と示した。

 

一方、歳出改革は28年度までに福祉、介護、医療など社会保障分野から1兆1000億円程度を削減するとみられる。

 

閣議後の会見で加藤鮎子こども政策担当大臣は支援金について「歳出改革などで全体として実質的な負担が生じないようにする」と強調。制度の理念などの説明に尽力する考えを示した。同様に、武見敬三厚生労働大臣は介護や医療における負担見直しも含めて、歳出改革の検討を進める意欲を示した。

衛藤議員「施策の検証不可欠」

政府が少子化対策関連法案を閣議決定したことについて、自民党の衛藤晟一参院議員は「我々が提案した内容は今回すべて入った」と評価した。衛藤議員は現在、同党の「こども・若者」輝く未来創造本部で顧問も務めている。同党少子化対策調査会長の時代から少子化の現状を「国家存亡の危機」だと訴え、複数回にわたり提言してきた。

 

結婚から子育てまでライフステージに応じた総合的な対策を早急に進めるべきだと主張。児童手当の大幅な拡充や、育児休業中も手取りが減らない支援など具体的施策は法案の内容と同じだ。

 

財源についても、企業を含め社会の参加者が公平に負担する仕組みを提案していた。「抜本的な対策には介護保険制度をつくるくらいのエネルギーが必要だと思っていた」と振り返る。

 

ただ、衛藤議員らは第3子への月6万円の児童手当や、夫婦で育児休業給付を産後15カ月取得できる仕組み、大学などの学費の大幅な負担軽減などを訴えており、法案では提言よりも財政規模が小ぶりになっている施策もある。

 

衛藤議員は「少子化トレンド反転は2030年までがラストチャンスになる。もっと一気に予算を投入すべきだったと後悔することにならなければいいが」と話す。法案成立後は施策を同時並行で検証し、改善していくことが不可欠だと主張する。