障害者65歳問題、支給却下は審理不十分 最高裁、差し戻し判決

2025年0729 福祉新聞編集部
判決後、最高裁前で結果を伝える天海さん(中央)

65歳になったのを機に介護保険の利用を強いられ、障害福祉サービスの支給を打ち切られたのは違法だとして、脳性まひの天海正克さん(千葉市、76)が同市の処分取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決が17日、最高裁第1小法廷(岡正晶裁判長)で言い渡された。

第1小法廷は同市の処分を違法とした2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。2審判決を不服として上告した同市の請求を一部認めた形だが、同市の処分の妥当性については判断を保留した。

介護保険優先は追認

障害福祉サービスを利用していた人が、65歳を機に原則として介護保険サービスの利用に移る「介護保険優先原則」は争点にせず、同市の主張を認めた1審、2審の判決を追認した。

判決を受けて同市は同日、「判決内容を十分精査し、適切に対応する」とした。天海さんは判決後の集会で「市の対応は納得できない。これからも頑張る」と述べた。

「自己負担は当然予定」

2023年3月の2審判決は、介護保険を利用しても自己負担ゼロが維持される措置があるのに、天海さんに適用されない点を不均衡と判断。不均衡を避ける措置を取らなかった同市を「裁量権の行使を誤った」と批判し、違法と断じた。

同市は「この不均衡は国の制度に由来するものであり、市町村が裁量で解消すべきものではない」として上告。第1小法廷は「介護保険の利用により自己負担が生じることは法令上、当然に予定されている」とし、2審判決を「是認できない」と批判した。

「審理を尽くすべき」

一方、「天海さんが要介護認定の申請を拒んだから障害福祉サービスに相当する介護サービスの量を算定できない」とし、それを理由に障害福祉サービスの支給を打ち切った同市の判断には疑義を残した。

要介護認定を経なくても障害福祉サービスを支給することも考えられるとし、そうした事情が天海さんになかったか審理を尽くすべきだとした。

提訴は15年11月27日。天海さんは14年7月に65歳になるまで障害福祉サービス(居宅介護)を利用し、自己負担はゼロだった。介護保険の申請をしない天海さんに対し、同市は同8月、障害福祉サービスの申請を却下した。後に天海さんが介護保険を利用してからは、1カ月1万5000円の自己負担が発生。天海さんは処分取り消しと国家賠償法に基づく損害賠償を求め、1審は敗訴、2審は勝訴した。

13 Comments
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る