手話法成立まで運動15年、やっと結実 施策具体化が重要〈ろうあ連盟〉

2025年0630 福祉新聞編集部
報告会には約80人が参加して法の成立を喜び合った

「ようやく成立した。無上の喜び」

全日本ろうあ連盟の石橋大吾理事長は手話施策推進法が成立した翌6月19日、衆議院議員会館で開いた報告会でそう話した。

2006年12月、国連総会で採択された障害者権利条約に「手話は言語」と定義された。それを受けて連盟が10年に「手話言語法」の法制化を目指す運動を始めてから、実に15年かかった。

運動で訴え続ける中、賛同する自治体が出てきた。13年10月に鳥取県が全国で初めて手話言語条例を施行。その後全国に広がり、現在約600自治体で条例が成立している(連盟調べ)。16年3月、全国の自治体議会で「手話言語法制定を求める意見書」の採択が達成されたことも法成立の後押しになった。

連盟は、ろう者が当たり前に社会参加し、権利を守ることができるようにするため「手話言語」にこだわった。しかし、超党派議連からは、手話を言語と定義する方法がない、言語という言葉は法律になじみがない、などの理由でなかなか理解を得られなかった。

じくじたる思いを抱え、何度も話し合いを重ね、最終的に「名より実を取る」(石橋理事長)ことで決着した。出生時から耳の聞こえない石橋理事長が、手話を学び始めたのは高校2年。それまで耳の聞こえる家族とは「口話」のため、孤立を感じることがよくあった。ろう者が生活のあらゆる場面で、こうした孤立や苦悩などを感じないで済むようにするために同法の意義がある。

報告会では「ゴールではなくスタート」と言う声が多く聞かれた。同法は理念法のため、今後、施策の具体化や実効化が重要になる。連盟は「手話言語」を諦めていない。調査研究なども積み重ね、「今度は実を充実させて名を取ることに結び付けたい」と石橋理事長は力を込める。

報告会には超党派議連の議員も多く駆け付けた。7月に勇退する衛藤晟一会長(自民)と山本博司幹事長(公明)はともに「感無量」としみじみと振り返った。関わった人それぞれに思い入れのある法の成立となった。