重度知的障害者の地域生活推進で団体設立へ〈神奈川〉
2025年10月12日 福祉新聞編集部
重い知的障害のある人が入所施設ではなく、支援者に囲まれてアパート暮らしができる環境を整えようと、行政などに働き掛ける動きが始まった。
発起人は神奈川県座間市の尾野剛志さん。2016年7月、県立津久井やまゆり園(相模原市)の殺傷事件で重傷を負った一矢さんの父親だ。
9月28日、同市内でその推進団体の設立準備会を開いた尾野さんは「一矢が座間でアパート暮らしを始めて5年。施設にいる時とは180度違う暮らしを送り、落ち着いた。一矢のような暮らしを望む人はたくさんいるはずだ」と話し、賛同者を募っている。
現在、尾野さん夫妻とは別のアパートで暮らす一矢さんを支えるのが重度訪問介護サービス。一矢さんはNPO法人自立生活企画(益留俊樹代表、東京)の介護職員による同サービスを使う。
外出時を含め生活全般を支える同サービスの利用者は全国で約1万3000人。その多くは肢体不自由者だ。制度上は知的障害者も対象だが、実際に利用する人はわずかだ。
益留代表によると、神奈川県内にも同サービスを提供する事業所はあるものの、一矢さんを受け入れるところはなかったという。「一矢さんは偶然利用できた、と言う人がいるが、一矢さんをレアケースにしてはいけない」と強調した。
同日の準備会には県営時代の津久井やまゆり園職員だった西角純志さん(専修大講師)らが駆け付け、議論の末、団体名を「重度知的障害者の地域生活を進める会」とすることに決めた。
今後の活動や一矢さんの暮らしぶりは公式サイト「よってけ一矢んち」で確認できる。