新しい暮らしに挑戦 津久井やまゆり園殺傷事件から8年で追悼式
2024年08月06日 福祉新聞編集部神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(永井清光園長、相模原市)で知的障害のある入所者らが園の元職員に殺傷された事件から8年となった7月26日、同園で県が主催する追悼式が開かれ、黒岩祐治知事や遺族ら89人が参列した。
追悼式では事件前からの入所者、奥津ゆかりさん(55)が同県茅ケ崎市内のグループホーム(GH)に移れるよう体験利用を重ねていることを報告。事件で亡くなった19人に向けて「これからも天国から見守ってください」と語りかけた。
追悼式後の記者会見に初めて臨んだ奥津さんは、茅ケ崎は幼少期を過ごした場所であり、海がきれいであることにも言及。新しい暮らしに挑戦する喜びを語った。
楽しく働ける場に
同園の今年度の運営方針は「職員が楽しく働ける職場づくり」。職員が自ら発案したことを試す楽しさがないと、サービスの維持・拡充は困難だと永井園長はみる。奥津さんは会見で「職員は楽しそうだ」と話した。
この方針は事件を踏まえて県が制定した「当事者目線の障害福祉推進条例」(2023年4月施行)とも符合する。条例は前文で「支援者や周りの人による工夫」を重視。そうした工夫が障害者だけでなく障害者に関わる人々の喜びになることを目指すとうたう。
暮らしが多様化
同園は21年8月、定員60人の施設に再建され、今年7月1日時点の入所者は56人。そのうち10人は昼間は外部の「生活介護事業所」に通う。昼と夜の生活の場を分ける「昼夜分離」が進むなど暮らし方が多様化している。
また、障害者を一時的に受け入れる短期入所(定員6人)は23年度、稼働率が約60%(1日当たり3・6人が利用)と高い数値を誇る。
23日に神奈川県知的障害施設団体連合会(出縄守英会長、横浜市)が同市内で開いた「やまゆりの日」の講演会で永井園長は、25年度、同園の「生活介護」の従たる事業所を外部に開設する方針を説明。「地域生活移行を見据えた日中活動にしたい」と語った。