高齢、障害、児童 一体型ショートステイ 小田原福祉会がひと休みできる居場所

2025年0408 福祉新聞編集部
共生型ショートステイを利用し、同じ空間で過ごす高齢者と障害者

神奈川県小田原市の社会福祉法人小田原福祉会(時田佳代子理事長)は、全国的にも珍しい、高齢者、障害者、児童が利用できる一体型ショートステイを運営している。家族が病気で世話をできない高齢者や障害者、家庭で課題を抱えている児童など、さまざまな事情で生きづらさを抱えている人がひと休みできる居場所になる。

県内初の共生型

2020年10月、特別養護老人ホーム潤生園併設のショートステイ27床のうち、21床を県内初の共生型ショートステイに転換した。共生型サービスは18年4月に創設され、介護保険または障害福祉の指定を受けていれば、もう一方の指定を特例で受けられ、両方のサービスを提供できる。井口健一郎施設長は「障害者施設からは高齢化する利用者の介護に困っていると相談があり、地域包括支援センターからは高齢の親と障害のある子の対応に悩んでいると聞き、取り組むことにした」と言う。そして今年2月、市の子育て短期支援事業を受託し、高齢者、障害者、児童を受け入れる体制が整備された。

異分野でも対応

これまでに共生型ショートステイを利用した障害者は約30人。この日は2年以上前から利用している80代の母親と50代のダウン症の娘さんが利用していた。

意思疎通が難しい娘の世話をしていた母親がパーキンソン病になり、毎月2泊3日で利用している。母親は「ここでは食事の心配がないし、娘の入浴介助もしてくれるので助かる」と言う。

そんな母娘に職員が寄り添う。片倉佳美係長は「当初は娘さんが引きこもりだったので、送迎は1日がかりだったが、少しずつ慣れてきた」と話す。

共生型ショートステイの職員は14人。それまでの高齢者介護と専門性は異なるが、「障害者施設の視察や研修も行っている。在宅生活を目指す視点は同じで、精神障害者には認知症ケアが応用でき、対応に苦労していない」と片倉係長。

職場が活性化

高齢者以上に障害者とのコミュニケーションは必要で、見守っていく期間も長いため、障害者の成長を感じられるようになった。それにより職員のコミュニケーション力が上がり、フロアに活気が出た。井口施設長は「生きづらさとは何か。それに対してどうアプローチすべきか職員が考え始めた」と言う。

時には高齢者と障害者が一緒に買い物に行くこともあり、共生型ショートステイは従来の縦割りを超えた対応ができる利点がある。しかし、23年11月時点で全国に93カ所しかなく、普及していない。

同会は社会福祉法人として困難を抱えている人の支援を最重視する。障害者に付き添う親は食事代のみで一緒に泊まれるようにしている。井口施設長は「『困ったら潤生園に相談』が地域の合い言葉になれば」と話す。

児童のショートステイは泊まりと時間利用ができる。まだ利用はないが、相談は寄せられている。児童にとって安心できる居場所になるよう、職員と共に準備を進めている。

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