自主財源で地域支援 「お困り事情」掘り起こしも(豊年福祉会・大阪)

2025年0331 福祉新聞編集部
左から西田さん、西中さん、中村さん、德山さん

大阪府交野市の社会福祉法人豊年福祉会(西田孝司理事長)は2009年4月1日、自主財源で「地域福祉サポートセンター」を設立した。地域の人々の「お困り事情」を掘り起こして伴走支援してきた、それまでの事業をより強化。家具などのリユース(再使用)や、骨髄バンクへのドナー登録の啓発なども展開している。法人創立から45年。「七夕の街」での息の長い活動が、地域共生がうたわれる今、脚光を浴びている。

「施設は社会資源。地域のみなさんのものです」

理事長の西田さんは、交野市星田の特別養護老人ホームや軽費老人ホームなどがある複合拠点施設「明星」(法人本部)で、こう言い切った。

人口約7万7000人。市街地を流れる天野川。織姫と彦星が年に1度の逢瀬を重ねた、と伝わる「逢合橋」が架かっている。法人は、そんな七夕伝説の街に1980年10月に誕生した。

「天野川は、星空の『天の川』にちなんでいます。交野には星が付く地名が多く、明星の住所も星田です」

毎年の七夕祭りの短冊に込める法人の思いは、<すべての人と共に健康で生きがいある安心した暮らしを>。「施設は地域のみなさんのもの」という言葉に通じる、法人の設立理念だ。

アウトリーチで制度外支援も

法人の地域福祉の礎は、93年に設立した在宅介護支援センターの活動にある。高齢者や障害者の在宅生活を保障する事業で、アウトリーチに徹していた。

「『野菜やお米はありますか』。必ずご自宅を訪ねて、『お困り事情』を掘り起こします。借金や、何らかの生きづらさを抱えるなど、ご本人の困りごとが重複している事例が少なからずあります。制度外の支援も行います。新年度に入りましたが、そんな姿勢を貫くことが、いつの年度も私たちの目標です」

明星(特養)の施設長で、長年、CSW(コミュニティソーシャルワーカー)として活動している德山里子さんは、こう話した。

その延長線上に、2004年に大阪府社会福祉協議会老人施設部会(現部会長は西田さん)が始めた生活困窮レスキュー事業があり、率先垂範してきた。

家具、家電のリユース支援

レスキューと同時に、「かぐでん(家具電)ネットワーク」活動を始めた。きっかけは、野宿者の支援。居宅生活に導くにも、生活必需品がない。そこで地域の人々から、使用できるのに不要になった家具、電化製品、食器、衣類などの寄贈を受け、困っている人に無料で届けるネットワークをつくり、活動を始めた。

「レスキュー事業の経済支援(現物給付)だけでは足りない、切実な『お困り事情』です。23年度は50件(30万円相当)の支援を行いました」

今年1月、センター長に就任したCSWの西中宏さんは、こう話した。

いのちのアサガオ

09年春、自主財源の公益事業として「地域福祉サポートセンター」を立ち上げた。法人本部を拠点に専従職員を配置。従来の在宅介護支援センターの活動などを強化する一方、新たな活動をつくっていった。

骨髄バンクへのドナー登録を啓発する「いのちのアサガオ」活動も、その一つ。德山さんは13年、府社協の会合で、新潟県胎内市のNPO法人から配布されたアサガオの種3粒を施設に持ち帰った。

白血病で亡くなった7歳の丹後光祐君が、約3カ月だけ通った小学校で大事に育てていたアサガオ。その種を「骨髄バンクのドナー登録者を増やしたい」という母親の思いをくんで、NPO法人が全国で配布。「明星」でも栽培して、骨髄バンクへの理解を深める活動を始めた。

「毎年9月ごろ、たくさんの花が咲きます。そこから採れた種を、文化祭や夏休みの介護体験の時に、地域のみなさんやこどもたち、実習生に配っています」

西中さんと共にCSWとしてセンターを担っている明星副施設長の中村和巳さんはこう話した。この12年間で1万粒以上の種が配布され、毎年、七夕伝説の街に「いのちのアサガオ」が咲き誇る。

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