刑余者の社会復帰を後押し 若手スタッフが活躍(山梨・光風会、岐阜・美谷会)

2025年0226 福祉新聞編集部
左から井上センター長、古屋さん、内澤さん=光風会・甲州市鈴宮寮内のセンター

1人でも多く安定した暮らしへ――。法を犯した高齢者や障害者らを福祉サービスにつなぐ地域生活定着支援センター。山梨県で業務を受託する甲州市の社会福祉法人光風会(熊谷信利理事長)では、若手スタッフが主力として活躍している。「近ごろは弁護士からの相談が増えている」とセンター長の井上修成さん(26)は言う。

支援センターは厚生労働省が2009年度から設置し、現在は全都道府県にある。行き場のない刑務所からの出所者に宿舎や食事を一時的に提供する自立準備ホームを運営する光風会が、以前受託していた別の社会福祉法人から23年に事業をバトンタッチした。井上センター長のほか、主任相談員の古屋法子さん(29)、相談員の内澤百音さん(22)の3人(いずれも社会福祉士)を中心に、保護司の資格を持つ熊谷理事長(42)や管理栄養士、行政・警察OBら9人の職員が担当する。

約2年間に延べ100人ほどに対応した。再犯者を含め本人や家族からの福祉サービス利用相談が約4割と最も多い。さらに矯正施設(刑務所など)を退所して福祉施設へ入った当事者の生活保護申請▽病院受診の同行▽住まいや職場探し(特別調整事業)がそれぞれ2割と、業務は幅広い。また、被疑者の時点から弁護士と同行して拘置所で社会復帰への希望を聞いたケース(入り口支援)もあるという。

その一人、飲酒のうえ窃盗に走った50代の男性から「おげんきですか。かぜをひいていませんか。おてがみありがとうございます。どこのけいむしょにいくかは、わかりませんが、いっしょうけんめいがんばります」との手紙をもらった古屋さんは、「知的障害の疑いがありますが、当方を気遣ってくれ、アドバイスが生きているようでうれしい」と話す。初対面は未決の段階の拘置所だった。いま服役中だ。この人を含め、3~4人と文通を続けているという。

山梨県の甲府刑務所は男性受刑者しかいない。センターへの相談は男性が9割と圧倒的だ。井上センター長のふるさと岐阜県には女性受刑者を収容する笠松刑務所があり、社会福祉法人美谷会(関市、森川幸江理事長)が受託・運営する同県地域生活定着支援センターの相談対象の約7割は女性という。相談員の井上真人さん(29)は「女性は窃盗や覚せい剤、連れ合いに引きずられての罪が目立つ。社会へ出るにあたり、プライバシーにとても神経質で、私たちも気を使う」。山梨県の井上センター長とは親類だ。

センターの関係者は保護観察所、検察庁、行政、民生委員、NPOや居住支援法人など多岐にわたるが、特に出所間もない1人暮らしの高齢者の住まい探しは容易ではない。偏見も少なくないといわれる。

山梨県内の大学を昨年卒業、光風会に就職した内澤さんは「福祉実習中に発達障害のある中年男性と出会ったのがきっかけで、この領域に関心を抱きました。『どう支援していいか分からない』と戸惑う福祉の専門職の人もいるが、地域の人たちを含め、偏見を除くためにセンターと外部との交流を広げていければ」と、県内を回っている。

一方、今月26、27両日、群馬県で「これからの司法と地域福祉の今を考える」をテーマに「関東・甲信越ブロック研修会」(全国地域生活定着支援センター協議会主催)が開かれる。神奈川、群馬両県のセンター職員と並んで、井上センター長は山梨県での取り組みや司法と福祉の連携について報告するという。

入り口支援 拘留や公判など未決の段階(矯正施設入所前)から福祉などに関する相談に応じること。65歳以上の高齢者や障害者が主な対象。これに対し、矯正施設退所後の支援を「出口支援」と言う。

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