ALS介護訴訟、一審の賠償命令棄却 職員暴言の慰謝料増額〈東京高裁〉
2025年07月21日 福祉新聞編集部
埼玉県吉川市に住んでいたALS(筋委縮性側索硬化症)の男性(49)の介護サービスをめぐる訴訟の控訴審判決が8日にあった。東京高等裁判所(三角比呂裁判長)は1審のさいたま地裁判決の介護給付は支持しつつ、市に対する約133万円の賠償命令は棄却した。
男性は痰の吸引などで常時介護が必要で、1日24時間の重度訪問介護を申請したが、市は妻が介護できることなどを理由に月413時間の給付しか認めなかったため、2021年に提訴した。1審判決は市に対し、月605・5時間の介護給付と、男性が負担した介護費用を含む約133万円の賠償を命じた。
高裁判決は、同居家族がいる場合でも月700時間超の給付を認めている自治体もあるが、大多数の自治体で一般的に認めているわけではないことなどから、国家賠償法の違法行為があったとは言えないとし、1審の賠償命令判決を棄却した。
一方、市職員の男性への暴言について、1審は市に慰謝料5万円の支払いを命じたが、30万円に増額した。
男性弁護団の藤岡毅弁護士は「判決は前進した面と後退した面がある。障害福祉のケースワーカーに対し、不適切な対応には賠償が求められるという警鐘になる」と話した。最高裁に上告するかは男性と協議して決めるという。