〈能登地震から5カ月〉職員退職で縮小・休止 奥能登2市2町の福祉施設
2024年06月02日 福祉新聞編集部元日に能登半島を襲った大地震から5カ月。死者は230人に上り、震災関連死で30人が亡くなった。住宅被害は8万棟を超え、今も114の避難所で1736人が暮らす。福祉施設は石川、新潟、富山3県で749カ所が被害を受け、140カ所で断水、停電が続いている。道路の寸断で被災施設の修復が遅れ、職員の退職による事業の休止・縮小が続いている。
石川県珠洲市の特別養護老人ホーム「長寿園」(社会福祉法人長寿会)は発災時98人の利用者がいたが、91人は他の施設に避難した。今も一部水道が使えず、建物の破損がそのままの箇所もあるが、少しずつ利用者が戻り70人が生活している。
法人職員230人のうち50人が退職したため、特養の定員を100人から91人に減らし通所介護は1年間休止することにした。「事業を縮小せざるを得なかった」と中村充宏施設長。通所介護のスペースは今も福祉避難所となっている。高齢夫婦2組が利用し、特養の職員が支援している。
輪島市の特養「あての木園」(社会福祉法人輪島市福祉会)は現在休止している。電気は使えるが、水道管や建物の修復ができず、職員数十人が退職した。通所介護などは再開したが、利用者は以前の2割程度。
特養職員の賃金支給には雇用調整助成金を活用しているが、全額を賄えず、法人の積立金を取り崩している。
利用者から施設に戻りたいとの希望もあり、7月の再開を目指している。谷口広之施設長は「安心して住める地域だと分かってもらうためにも早く再開したい」と話す。
職員不足に苦労しているのは能登町の特養「こすもす」(社会福祉法人清祥会)も同じだ。通所介護2カ所のうち1カ所を休止して職員を特養に回し、全国老人福祉施設協議会のDWAT(災害派遣福祉チーム)から介護職員数人の応援を受けている。
瀬戸博事務長は「早く定員の120人に戻したいが、職員がいない」と話す。建物や水道管などの修復に1億円以上かかり、発災後数千万円の減収となる見込み。それでも瀬戸事務長は「利用者に迷惑がかからないようにしたい」と力を込める。
穴水町の児童養護施設「あすなろ学園」(社会福祉法人北伸福祉会)は分園が大きく破損したため、本園で20人が暮らしている。4月に4人入園する予定だったが、受け入れられなくなった。
園の体育館は損壊して使えず、小学校のグラウンドには仮設住宅が建った。「こどもの遊びがなく、ストレスを抱えないか心配」と角間邦夫園長。今も飲料水は支援物資を使い、近隣のスーパーは1軒しか再開しておらず、野菜や肉などの生鮮食品が仕入れにくく、こどもの栄養面も心配する。「生鮮食品の支援物資があると助かる」と言う。