特養で無料学習塾 地域の元教員とタッグ〈幸生会・仙台市〉

2025年0715 福祉新聞編集部
特養の会議室で勉強に励むこどもたち=泉クラシック提供

仙台市泉区の特別養護老人ホーム「泉クラシック」(社会福祉法人幸生会)は地域貢献の一環で、小学生を対象に無料の学習塾「かむり塾」を開いている。地元の根白石地域に学習塾が無く、バスの便数も少ないといった厳しい学習環境に着目し、施設の会議室を活用して2016年に開講。新型コロナの影響で2年近くの休止を余儀なくされたが22年2月に再開。これまでに約50人が巣立った。

かむり塾は近隣2小学校の生徒を対象に週2回、放課後の午後3時半から2時間開催。これまで4~6年生が対象だったが、今年度から3、4年生を対象に毎週火、木曜に開催。塾生の募集用紙は学校が配ってくれており、加えて保護者らの口コミでも広がり、各曜日とも定員の10人ほどが参加している。

勉強を教えるのは元教員5人。有償ボランティアの位置付けで法人が講師料として1時間当たり1500円を支払う。当初は施設職員が講師を担うことも検討したが、介護業務を抱えながら取り組むことは難しいと判断して、地域の元教員に協力を依頼した。

年間計画やカリキュラム、教材の選定も講師が担い、学校の宿題を教えたり、一人ひとりの理解度に応じた課題を出したりしている。こどもの様子は連絡帳を通じて保護者と共有している。

塾生の送迎は施設側が担当。施設の車で小学校まで迎えに行き、塾終了後は防犯の観点から直接自宅まで送る。また施設職員でかむり塾の担当(4人)を決め、教材の準備やこどもたちの見守り、講師、家族との連絡調整を手分けしている。

学習支援だけではなく、こどもの居場所としての役割も果たしている。時には勉強を早く切り上げ、体験活動として施設の調理場で団子を作ったり、プラ板作りに挑戦したりして和気あいあいと過ごすことも。過去には卓球大会を開き、講師や施設職員も参加して大いに盛り上がった。

生活相談員でかむり塾担当の佐藤千優さんは「介護施設でこどもと関わる機会が少ないので、1年を通して関わると成長の早さに驚く」。卒業生から寄せ書きの色紙が送られてくることもあるという。

コロナ禍前までは塾生が施設の納涼祭に参加するなど利用者と交流する機会があったといい、現在、交流再開に向けて検討の真っただ中だ。「七夕の短冊作りを一緒にできないか検討している。交流を通じ、利用者には元気を、こどもたちには介護の仕事を知ってもらうきっかけになれば」と話した。

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