障害疑われる子への助言 全国の保育所対象に秩父学園が職員派遣 

2023年0831 福祉新聞編集部
秩父学園での幼児療育の様子。専門の職員が全国に派遣される

 国立の知的障害児入所施設「秩父学園」(埼玉県)は、知的障害や発達障害の疑われるこどものいる保育所への職員派遣を拡充した。園児の様子を見て、その子に合った環境を設定するよう助言する。学園独自のサービスで、依頼する側の費用負担はゼロ。従来は埼玉県内の保育所や乳児院などに派遣してきたが、今年度から対象を全国に広げた。

 

 全国対応することで国立施設としての存在感をアピールしたい考えだ。学園はベテランの心理職や児童指導員の計10人を派遣候補として用意。「派遣要請の相談は随時受け付ける」(齋藤信哉・地域支援課長)という。

見立てと環境設定

 「じっとしていられない」「集団行動に入れない」――。そうしたお子さんに困ったことはありませんか?

 

 今春、同学園が保育所の全国団体の機関誌にこんな呼び掛け文を載せると、東北、中国、九州の各地方から派遣要請があった。

 

 県外派遣の第1弾となったのは「りじょう認定こども園」(広島市)。7月下旬、学園の職員2人が訪れ、発達の気になる園児2人の様子を観察した。

 

 その園児が何に困っているか見通し、周囲の環境をどう設定すれば困り感が減るのかを探った。

 

 これは「見立てと環境設定」と呼ばれるもの。本来は主に各地の公立の療育センターが担うが、需要に対し供給が追いつかない。

 

 同園の岩永尚子園長は「地元の療育センターに相談したが、来園は3~4カ月待ちだった。こどもは日々成長するので、あまり待てないと判断し、秩父学園に依頼した。すぐに対応してくれたので驚いた」と話す。

 

 「3~4カ月後に同園の変化を聞き取ってフォローするのも私たちの仕事」と話すのは、同園に出向いた心理療法士・坂寄里紗さん。発達の気になる園児に対し、集団行動に適応するよう指導するか個別対応するかの判断に迷う園が多いとみている。

低調な保育所訪問

 こうした職員派遣は、保育所や幼稚園を障害福祉の専門家が訪ね、発達の気になる子の様子を観察して、保育士や保護者に助言する障害福祉サービス「保育所等訪問支援」(事業所数約1400カ所)に似ている。

 

 しかし、このサービスを利用する児童は1カ月当たり約1万4000人。年々増加傾向にあるが、未就学児が通う児童発達支援(約14万人)や就学児が通う放課後等デイサービス(約30万人)と比べると低調だ。

 

 政府は今後、全国約700カ所の児童発達支援センターを増やし、保育所等訪問支援を同センターの必須機能とする。障害のあるこどもが、そうでないこどもと一緒に生活できる環境を整える方針だ。

 

福祉新聞の購読はこちら