障害者が駅清掃で貸し切り列車に 「福祉」と「鉄道」の新たな試み
2022年05月26日 福祉新聞編集部千葉県いすみ市内の障害者施設の利用者が地元のローカル線いすみ鉄道(全長26・8キロ)の駅を清掃し、代わりに貸し切り列車に乗車できる取り組みが5月11日に始まった。
社会福祉法人土穂会(内野浩二理事長)が新型コロナで外出を制限せざるを得ない利用者のために発案し、乗客増加が見通しにくい中で、地域との連携を重視するいすみ鉄道が賛同した。お互いに負担の少ない方法として、利用者が施設から無理なく車で移動できる駅間で、混雑しない平日午前中に2車両のうち1車両を貸し切ることで実現した。
同日は土穂会の利用者4人が、全14駅中最も乗降客(1日平均219人)が多い大原駅周辺の草むしりや駅のいすの清掃などをした後、大原駅から大多喜駅までの約30分、利用者計20人が貸し切り列車に乗った。
普段は遠くから見るだけの列車に乗って緊張気味だった利用者だが、発車すると「ワァー、動いた」と歓声が湧き、最後尾の窓から景色を見るなどして楽しんだ。清掃にも参加した鉄道ファンの小野木敦さんは「初めていすみ鉄道に乗った。楽しい」と話す。
この取り組みは福祉と鉄道が交流し、新たな地域コミュニティーを生み出す試み。土穂会では、これまで牧場や蒸留所と協働して農福連携も実践している。内野美佐マネジャーは「地域のさまざまな集まりに参加することでアイデアが生まれる。アイデアは具体化して職員も巻き込むことで実現に近づく」と言う。
今後は2カ月に1度、順番に障害者施設が行う予定。特別支援学校などにも活動の輪を広げたいとしている。