「平時からの備えを」大阪府社協に災害ボランティアセンター常設へ
2022年03月16日 福祉新聞編集部大阪府社会福祉協議会に今春、災害ボランティアセンター(VC)が常設されそうだ。府の新年度予算案に約1000万円の補助金が計上された。市町村の災害VCの運営をサポートできるスタッフの養成や、官民一体の支援ネットワークの構築を進める。組織力の大きい大阪での常設化は、主に避難所を拠点に活動する災害派遣福祉チーム(DWAT)と共に、被災地の強力な支柱になると期待されている。
コロナ禍、地元主体に
現場の災害VC運営の3原則は、「被災者中心」「地元主体」「協働」だ。
「今はコロナ禍で行動が制限され、被災地へ入りにくい。だからこそ、『地元主体』が一層重要で、市町村社協の強化が大事です」
大阪府社協地域福祉部の叶井泰幸部長は、こう話した。常設化が、新年度の吉村洋文府知事の重点事業の一つに挙げられ、名称が「市町村支援・地域防災力強化事業」となったのも、コロナ禍での地元強化構想の表れだ。
常設化のねらいは、「平時からの備えを」。具体的には、災害VCに専従員を置いて、市町村社協の職員が自力でVCの運営を切り盛りできるスキルを学ぶ集合研修や、災害VCの運営訓練を企画、実施する。
新ネットワーク構築
2005年5月に常設化した京都府災害VCは、この16年間で生活協同組合や浄土真宗本願寺派など30団体の正会員を組織して、代表に京都府社協がなり、運営委員を選出。緊急時に人材派遣や救援物資などで協力する28団体のサポーターも組織した。京都国際センターや京滋ヤクルト販売など、多彩な団体や企業が名を連ねる。
一方で、大型トラックの出入りと24時間365日開設できる「資機材倉庫」を、府内をエリア分けして8カ所に設置した。
大阪府社協の災害VCも、こうした事例を踏まえながら、まず市町村域でのネットワーク構築をサポート。地元でずっと暮らしたいという被災者のニーズを考えると、地元の支援網の構築が一番だからだ。そして、NPOや企業とも、平時から「顔の見える関係」をつくり、府域でもネットワークを張り巡らす。さらに、全国ネットの活用も視野に入れる。
100人超の運営支援者
大阪府社協にも、培った財産がある。
その一つが13年2月に締結した、府下の全41市町村社協(大阪市、堺市を除く)と結んだ相互支援協定だ。発災時に、お互いに助け合う趣旨で、現場の災害VCをコーディネートできる「運営支援者」の養成を開始。これまでに100人を超える運営支援者が生まれ、実際に全国の被災地でも活躍してきた。
今後、南海トラフ地震などの大規模災害に備えて、大阪市、堺市との連携も強める。現地での要介護者支援や被災施設の復旧などにあたる「災害福祉」の観点からも、災害VCの常設化による新たな可能性を探っていく。