保育園が作業療法士らと連携 気になる子への対応力向上(香川)
2024年06月13日 福祉新聞編集部発達障害や愛着障害が疑われるが、診断のついていない〝気になる子〟が増える中、香川県観音寺市の観音寺ふたば保育園(社会福祉法人観音寺ふたば福祉会、定員140人)では、作業療法士、臨床心理士と連携して対応力向上を図っている。
同園では、落ち着きがなくじっとしていられない、体をうまく扱えず姿勢を保てない、衝動を抑えることが困難など、発達の気になる園児が10年ほどで約3割を占めるまで増えた。
仕事が理由でこどもを長時間保育所へ預けるなど、こどもとの愛着形成に対する社会の関心の希薄さも目立つ。こうした中、荻田淳園長は「診断の有無が重要なのではなく、必要とするこどもに支援が届くことが重要だ」と指摘する。
これまで同市の発達支援事業巡回相談を利用していたが、一層の対応力向上が必要だと感じた荻田園長は、保育所の配置基準外で法人負担となることを覚悟の上、交流のあった作業療法士を6年前に非常勤で雇用した。
作業療法士は月に15日程度の勤務で各クラスに入り、こどもの様子を観察。専門性を生かし、こどもの感覚統合を促す遊びを提案、実践するなど、保育士と連携して適切な支援や環境構成に取り組んでいる。
加えて、2021年度には親子で触れ合う時間を増やす試みも始めた。「おやこで遊ぼう会」と銘打ち、2~5歳クラスの園児と保護者を対象に、家庭でできる体を使った遊びを約30分楽しんでいる。各年齢が3カ月に1回、平日の夕方に実施している。親子が笑顔で過ごすことに加え、他のこどもとの発達の違いに気付き受容するきっかけをつくる狙いもある。
担任の保育士、プログラムを企画、指導する作業療法士に加え、県から障害児療育支援事業の委託を受ける障害者支援施設「ふじみ園」(社会福祉法人香川県社会福祉事業団)の臨床心理士・公認心理師1人も参加する。
心理士は参加する園児の保護者に個別アセスメントを行い、親子が降園後、保育士、作業療法士とこどもの発達状況や普段の様子を意見交換しながら今後の方針を協議。多職種連携でより良い関わり方を模索している。
荻田園長は「支援加配は大事だが、人数さえ増えればいいわけでもない。〝気になる子〟が増える中、多職種連携での支援が社会で必要だ」と訴える。
保育所と心理、リハビリ専門職の連携をめぐっては、施設への巡回支援を講じる自治体がある一方、少数だが、京都府内で保育所を運営する社会福祉法人美樹和会のように独自で常勤の心理士を雇う法人もある。香川県内では同県作業療法士会と保育関係者の座談会が昨年から開催されるなど、相互理解を進めている。