共同親権導入へ民法改正の要綱案決定 法制審部会「福祉の充実を」

2024年0203 福祉新聞編集部

法務省の法制審議会家族法制部会(部会長=大村敦志・学習院大法科大学院教授)は1月30日、民法改正の要綱案を決定した。離婚した夫婦が未成年のこどもの親権を共同で行使できるようにすることが柱。父母の協議で共同親権か単独親権か決めるとした上で、合意できない場合は家庭裁判所が「子の利益」の観点で裁定する。

 

法務省は3月に改正法案を国会に提出する方針。離婚後は親権を父母の一方が持つとした現行制度を改める。

 

離婚後も父母双方がこどもの養育に責任を持つことを促す狙いがある一方、現行制度で親権を持たなかった親が親権を持つことにより、こどもへの不当な介入や虐待が発生・継続するおそれもある。

 

要綱案はそうした不利益を回避するため、家裁が単独親権と裁定するべきケースや、共同親権とした場合でも父母のいずれかが単独で親権を行使できる条件を規定した。

 

それでも実際に不利益を回避できるかは個別のケースごとに異なるため、不安は残る。そこで同部会は5項目の付帯決議を採択し、父母やそのこどもへの社会的なサポートが重要だとして福祉など各分野における支援の充実を求めた。

 

家裁の人員体制の強化やその財源の確保を求める委員の意見もあったが、付帯決議では具体的に記述することを避けた。

3人反対も賛成多数

同部会の審議は非公開。法務省によると、21人の部会委員のうち3人が要綱案に反対し、賛成多数でまとめた。全会一致を慣例とする法制審で多数決は異例という。

こどもの意見表明権「人格の尊重」に含む

こども基本法がこどもの意見表明権を明記したことを踏まえ、同部会は父母による養育に関連し、こどもの権利を民法にどう規定するか議論した。

 

その結果、こどもの意見の尊重を明文化することについては「父母の責任をこどもの判断に転嫁することになりかねない」「こどもに過度の精神的負担を与えることになりかねない」との慎重論があり、見送った。

 

その代わり、こどもの意見を尊重するという意味を含めて「父母はその子の人格を尊重する」という条文を設ける。