「虐待受けた」6割 非行少年と保護者を初調査(犯罪白書)

2023年1217 福祉新聞編集部

法務省は8日、非行少年の幼少期の逆境体験を初めて分析した2023年版の犯罪白書を公表した。全体の約6割が家族から身体的な虐待を受けたと回答したことが判明。併せて、非行少年の保護者も調査した。法務省は「複雑な家庭環境を早期に把握し、保護者を支援することも欠かせない」とまとめた。

 

非行の背景に逆境体験があることは、かねて指摘されてきたが、調査で初めて裏付けられた形となった。法務省は今後の矯正政策に反映させる方針だ。

 

白書は「非行少年と生育環境」と題した特集を組み、食事の頻度、日常の過ごし方、就学や就労の状況を調べた結果を収めた。

 

調査は、21年に少年院に入所していた13~19歳の少年591人に実施。注目されるのは、幼少期に受けた虐待や家族の精神疾患・依存症、家庭内暴力といった逆境体験(12項目)の有無を質問した点だ。

 

その結果、61%が「家族から殴る蹴るといった体の暴力を受けた」と回答し、43・8%が「家族から心が傷つくような言葉を言われ、精神的な暴力を受けた」と答えた。

 

1項目以上該当があったのは87・6%に上った。

 

少年院在院者の保護者410人への調査では、こどもを持ってからの経験として約3割が「配偶者から暴力をふるわれた」と回答。約2割が「こどもに行き過ぎた体罰を与えた」と答えた。

 

白書は非行少年の逆境体験がトラウマにつながっているとみて、矯正教育でその配慮や理解が必要だと指摘。保護者が社会的に孤立している可能性にも言及し、地域における支援の強化を求めた。

 

また、同日は再犯防止推進白書も公表した。21年中に刑務所を出所し、22年末までに再び刑務所に入った「出所後2年以内の再入率」は14・1%で7年連続で低下。政府目標の16%以下を3年連続で達成した。