障害者の働き方、熟考の時 全国社会就労センター総合研究大会

2025年0727 福祉新聞編集部
2日目のパネルディスカッションに登壇した東京コロニーの吉田岳史さん(左)、わたぼうしの会の森下静香さん(中央)、筑紫会の吉原大樹さん(右)。メタバースなどの新しい取り組みがリレー報告された(7月18日、大阪国際交流センター)

全国社会就労センター協議会(セルプ協)主催の総合研究大会が17日と18日、大阪市天王寺区の大阪国際交流センターなどで開かれた。障害者が就労先を選ぶ時の「入り口」に新設される「就労選択支援」の開始を10月1日に控え、叶義文会長は一般就労に過度に誘導する懸念などを表明して「障害者が真に願う働き方の選択を」と呼び掛けた。

就労選択支援事業は、障害者総合支援法の一部改正で2022年に制定され、今年10月1日から新たに就労継続支援B型を利用しようとする人を対象にスタートする。27年4月には、A型を希望する人も対象となる。

本人にとって、本当に適性に合った就労になっているのか。能力が向上しているのに、同じサービスを利用し続けていないか。そこを見極める手立て(支援)がないために、本人の職業生活がゆがめられていないか。

厚生労働省は、そんな観点から、新規就労者だけでなく、すでにA型、B型、就労移行支援を利用している障害者にも就労選択支援を受けられる道筋をつくった。

本人との協同を重視

具体的には、1カ月(最大2カ月)のアセスメント期間を設置。作業場面などを活用して、本人の強みや特性、本人が望む方向に進む上で課題となることについて、本人と協同で整理して自己理解を促す。

本人、家族、支援機関、行政や学校などが集まり、多機関連携会議を開く。こうして就労移行、A型、B型、一般就労など、最適な就労先を見極めていく。

就労選択支援を行えるのは、就労移行支援、就労A、Bの実績がある事業所だ。利用者15人につき、常勤換算で1人以上の「就労選択支援員」を配置するなどの要件がある。支援員は、厚労省指定の養成研修の修了が必須で、研修は今年6月から開始。今後、年10回前後の開催が予定されている。

一般就労ありき、では間違える

新サービスについて、叶会長は基調講演で「その人が願う働き方が実現されるよう、その人の選択を尊重することが第一だ。セルプ協は、一貫してそう主張してきた。一般就労が、その人の幸せにつながるとは限らない。一般就労の押し付けや、誘導になってはいけない」と話した。

制度設計にあたって、参議院では「一般就労への過度な誘導等による福祉サービスの利用の抑制につながらないよう留意すること」が付帯決議され、衆参両院では「単に雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供する、いわゆる障害者雇用ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること」が付帯決議で示されている。

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