「措置控え」洗い直し 自民参議院議員の会、養護老人ホームの運営改善で
2024年07月06日 福祉新聞編集部閉鎖や定員減が相次いでいる養護老人ホームについて、6月19日に開かれた自民党の「地域の介護と福祉を考える参議院議員の会」(末松信介会長)が取り上げた。「措置控え」の原因に自治体の誤認識があることや、施設運営費(措置費)の基準単価を国が改定すべきことなどを出席(代理含む)した40人超の議員が共有し、厚生労働、総務両省の今後の対応を注視していくことになった。
措置控えに誤認識
会合では上月良祐議員が同席した厚労、総務両省に対し、「重要な問題。見て見ぬふりをせず一緒に取り組んでほしい」と述べ、同ホームの現状と課題を説明した。
同ホームは家族や住居の状況、経済的理由から自宅で暮らせない高齢者を受け入れる施設で、自治体が入所者を決定(措置)している。2006年の三位一体改革により、施設運営費が地方交付税に組み込まれ、自治体が施設運営費を歳出することになってから運営が苦しくなった。23年度時点で921ある施設の半数超が赤字。ここ6年で約50施設が閉鎖した。末松会長は「高齢者の最後のセーフティーネットなのに施設が減るのはおかしな現象だ」と指摘した。
原因の一つは施設運営費を抑えるため自治体が入所者を回さない措置控えだ。施設は入所率が下がり、運営が立ち行かなくなる。
しかし、上月議員は総務省の地方交付税における施設運営費の計算式を詳細にみると、入所者が増えれば自治体の負担も増えるのではなく「多く措置しても損はせず、少なくても得はしない」と説明。自治体の多くが三位一体改革で市区町村の全額負担になったと誤認識しているという。計算式の解釈は総務省が誤りはないと確認した。
基準単価の改定必要
また、06年に厚労省指針を基に各自治体が施設運営費の基準単価を定めたが、これまで18年の間に消費税増税、最低賃金や物価の上昇などがあったにもかかわらず、基準単価はほぼ改定されていないことも原因だ。施設の負担だけが増え、運営を逼迫させている。
地方交付税では被措置者1人当たりに充てる単価は18年間で1・38倍増えており、本来は基準単価も増額されなければならない。しかし、指針はもともと厚労省が示したもので、上月議員は「改定作業は自治体ができる業務レベルではない。国が行うべき」と求めた。
さらに施設運営費は人件費と生活費であり、建物の修繕費は含まれていない。基本的に国の補助もなく、結果、建替費用が捻出できず閉鎖するしかなくなる。
現場の立場から利光弘文・全国老人福祉施設協議会養護老人ホーム部会長は「支援が必要な高齢者に対し、国の助成を受けて造った建物、支援ができる人材がいる」と同ホームの活用を訴えた。同会事務局長の大家敏志議員が「定期的に会を開き、厚労省などにこの問題の解決策を示してもらう」と述べた。
会合を終えて現場関係者間では、同ホームの課題が解決に向かうのではと期待が高まっている。