退院後の生活支援「むすびプロジェクト」〈高齢者のリハビリ 92回〉

2024年0524 福祉新聞編集部

カマチグループは九州や関東で多数の回復期リハビリ病院を運営しています。近隣の急性期病院から患者を紹介してもらい、高い自宅復帰率で患者のリハビリを行っています。

しかし、退院後のフォローが十分できない患者は多く、「退院後どのように生活しているだろうか」「私たちのリハビリがその後、在宅で役立っているだろうか」など、気になるところです。

より積極的に患者の経過を追いながら退院後も提供できるサービスを行うことを目標として、「むすびプロジェクト」を作りました。

プロジェクトのスタッフはセラピスト、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士、薬剤師、歯科衛生士などです。各職種間で連携し「退院後の患者のデイケア」や「SNS(LINE)を利用した情報発信」など種々の取り組みを企画・実行しています。

LINEで情報発信

LINEを利用した情報発信の内容は自宅でできる運動▽脳卒中予防▽脱水予防▽栄養摂取▽口腔ケア▽嚥下障害予防――など多岐にわたり、動画も含めて定期的に発信しています。これまでに配信したもののうち、栄養士が作った「朝食の大切さ」についての概要を紹介します。

朝食の大切さ

朝食の役割は大きく分けて、次の三つ。

血圧など体のリズムを整える

体温、血圧など体のリズムを周期的に刻む体内時計は約25時間周期です。体内時計と1日の時間に1時間のずれがあり、このずれを整えられないでいると自律神経のバランスが崩れ、疲れ、不眠、集中力の低下、肌荒れなどの症状が表れる可能性があります。朝食を摂取することで、この1時間のずれを整えることができます。

脳に必要なエネルギーを補給する

寝ている間も脳がエネルギーである糖を消費しているため、朝の食事は脳を覚醒かくせいさせ、1日の準備をするために大切です。

栄養補給の機会を確保する

朝食の機会を逃すと、栄養が不足しがちになる上に、体調が崩れる可能性があります。さらに、1日3食の人に比べて、1日2食の人は肥満になるリスクが約5倍になると言われています。

おすすめの朝食

5大栄養素である、糖質・タンパク質・脂質・ビタミン類・ミネラルなどを摂取することが理想です。ただし、これだけの栄養素を含んだ朝食を準備するのは大変。LINEでは簡単に用意ができて、かつ、栄養もバランスよく取れる朝食を紹介しています。

例(1)粉末スープを牛乳で溶き、冷凍野菜をスープの中に入れて電子レンジで加熱。

例(2)おにぎりは具材に油やタンパク源のある物を、みそ汁もできるだけ具の多いものを選ぶ。

例(3)卵や肉の入ったサンドイッチと野菜ジュースで複数食材が取れる朝食など。

食欲がなくても、少量でいいので朝食を摂る習慣が大切です。また、朝食で200キロカロリー以上摂取するのが理想的です。

今回はむすびプロジェクトと、LINEを利用した情報配信の一例を紹介しました。このような取り組みが退院後の患者の生活支援の一部になればと思っています。

 

筆者=高澤悠輔 五反田リハビリテーション病院 リハビリテーション科 副主任

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長