養護・軽費老人ホーム、運営費の仕組み見直し 参院議員の会が提起
2025年07月01日 福祉新聞編集部
「地域の介護と福祉を考える参議院議員の会」(末松信介会長)が6月19日に開かれ、養護老人ホームと軽費老人ホームの運営費をめぐる問題が議題となった。自治体が定めている両ホームの運営費の増額を求めて現場から再三要望したり、厚生労働、総務省が数回通知を出したりしている。しかし、自治体の対応は進んでいないため、運営費の仕組みを見直す必要があるとの提起があった。
両ホームの運営費は、地方分権により国庫補助負担金から地方交付税に移譲し、自治体が地域の実情を勘案して決めることになっている。地方交付税で100%財政措置されているが、その仕組みについて自治体担当者の誤認識もあり、20年近く大半の自治体は増額せず、物価高や賃上げが進む中、両ホームの運営は深刻化している。問題の背景には、運営費の算定方法が複雑で市町村には負担が大きい。国は権限のある市町村が行うべき、都道府県は市町村に指示する権限はない、という構図がある。
こうした実情を説明した上月良祐議員(自民党)は「施設は苦しんでいる。もう市町村にこの問題を提起するエネルギーもない。現場を充実させるため地方分権されたが、真逆のことが起きている。仕組み自体を見直す必要がある」と指摘した。
その上で、総務省の地方行政に関する研究会の報告書案(6月16日)や、自民党の新しい資本主義実行本部の提言(5月15日)などが、両ホームの運営費算定事務の役割分担見直しや、都道府県、国が処理することも含め適切な見直しに言及していることを紹介した。
会合で全国老人福祉施設協議会の利光弘文養護老人ホーム経営委員長は「自治体にいくら要望しても理解してくれない現実が浮き彫りになっている」、中川勝喜軽費老人ホーム・ケアハウス経営委員長は「公的価格のため賃上げできず、他業種に人材が流れてしまう」と訴えた。