靴や装具、足元のチェックを〈高齢者のリハビリ〉
2023年06月30日 福祉新聞編集部皆さんは、自分の足に合った靴を履いていますか。履物は足を保護するものであり、個性を表すものでもあります。また、スポーツ競技のようにパフォーマンスを発揮するために開発され、その成果に影響を与えるものもあります。
靴や装具は、足元に障害がある患者の治療や生活支援を行う上で非常に大きな役割を果たしています。
まひなどで下肢の支持に問題がある人、足の変形などで通常の靴が履けない人に対して、その障害を補うための靴や装具は状態に合わせて製作され、患者の体の一部となります。
生活には欠かせないものですが、患者が退院した後は、在宅や施設では専門的にかかわるスタッフがいないため、靴や装具の点検がおろそかになりがちです。修理の必要性、作り替えの判断なども難しくなります。
製作時はきちんと合っていても、足部の変形や身体機能の低下などにより、合わなくなることがあります。靴や装具が変形することもあります。靴や装具が体に適合していないと、身体機能が損なわれ、種々のトラブルや事故につながることにもなります。
靴はきちんと足に合っているか、装具が正しく装着されているかなど、日ごろからよく観察し、変化があればセラピストや製作業者などの専門スタッフに相談する必要があります。
以下に主なチェックポイントを示します。
(1)足の観察~足趾の変形・発赤・痛み・胼胝(魚の目)・ひび割れ・爪の変形など
足トラブルは本人や家族が気付けばよいのですが、分からないままで過ごしていることがあります。
立つことを嫌がったり、歩くことをしなくなったりした人の足をよく観察すると、爪が皮膚に食い込でいたり、足の裏に胼胝が見つかったりします。足に痛みがあれば活動量は低下します。バランスを崩して転倒につながることもあります。
そうならないように日ごろのフットケアは大切です。問題があれば早々に医師や看護師に相談しましょう。
(2)靴の選び方~良い靴の基本
靴を選ぶ上での基本は「つま先に余裕があり足趾(足指)が圧迫されない」「適度に甲が締まる」「靴のかかととの形状が合う(靴がかかとをきちんとホールドしている)」「靴底にクッション性があり滑らない」などがあります。
車いすを使っている人も、足を保護するための履物は必要です。かかとを踏んで履くのはつまずきの原因となり危険です。
そのほか、ストラップや靴ひもの固定は良いか、靴底がすり減っていないか、履物の中に異物が入っていないか、などにも注意しましょう。
(3)装具の点検~継手の緩みやガタ、マジックテープにも要注意
「足継手のネジやビスの緩み、紛失している部品はないか」「足関節部の可動性や制動がきちんとしているか」「ストラップがしっかり固定できているか」「縫い目のほつれはないか」など日常的な点検が必要です。
ストラップを固定するマジックテープのチェックも忘れないようにしましょう。毛髪や繊維などが絡んでいると吸着力が低下し、歩行中にストラップが外れて転倒事故につながることがあります。ピンセットや吸着テープですぐに取り除いてください。
生活になくてはならない靴・装具は、その人の体と障害に適合していることが条件です。「足元を見る」ケアはとても大切なことなのです。
筆者=江連素実 アビリティーズ・ケアネット リハビリセンター長
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長