腹圧高めスムーズな排せつ

2022年1216 福祉新聞編集部

 ここ近年、「体幹トレーニング」など「体幹」に着目したトレーニングやダイエット方法をよく耳にするようになったのではないでしょうか。それと似たような言葉で「腹圧」という言葉がありますが、正確には異なります。では両者の違いは何でしょうか。

 

 一般的に前者はいわゆる胴体の部分を呼びます。つまり「体幹トレーニング」とは、胴体に関わる筋肉などの構造物を鍛えることを指します。一方、後者は「腹腔」と呼ばれ、胃や腸などの内臓が収納されている空間にかかる圧力のことを呼びます。そのため、正確には「腹腔内圧」と呼びます。

 

 では、この「腹圧」を高めるにはどうしたらよいのでしょうか?そのためにも「腹腔」の構造について整理していきましょう。

 

 「腹腔」は、上部は横隔膜、下部は骨盤底筋、後ろは背筋群、前面および外側面は腹筋群といった筋肉で構成されています。つまり「腹腔」は筋肉で構成された空間と言えます。これらの筋肉が働くことで「腹腔」に圧力が加わり、いわゆる「腹圧」が高い状態となります。

 

 では、この「腹圧」が高い状態と排せつにはどのような関わりがあるでしょうか。

 

 皆さんは排せつが思うようにできないときはどうしますか? おそらく息を止めておなかに力を入れているのではないでしょうか? そうです。いわゆる息んでいる状態です。

 

 この息んでいる状態を整理してみると、(1)息むために息を吸うことで横隔膜が下がり、腹腔の上から圧を加えます(2)次に息を止め、腹腔に加わる圧力を維持していきます(3)そしておなかに力を入れることで腹筋群が固くなり、内側へ圧を加えることができます。

 

 その結果、消化器系に圧を加え、排せつ物を押し出すことができるようになり、スムーズに排せつが行えるようになります。

 

 また、「腹圧」が高いということは「腹腔」を構成する筋肉が働いていることになります。「腹腔」を構成する筋肉は胴体部分の筋肉になるので、「腹圧」が高まるということは「体幹」がしっかりすることにつながります。この「体幹」は手足が動くための土台になりますし、腰痛の予防にもなります。このように「腹圧」を高めることで得られる効果はさまざまです。

 

 そこで、今回は腹圧を高めるための簡単なトレーニング方法を紹介します。排せつにお悩みの方だけでなく、腰痛やコンディションを整えたい人もぜひ実践してみてください。

横隔膜のトレーニング

 (1)いすに腰掛けます(仰向けで寝て膝を深く曲げた姿勢でも良いです)(2)おなかに手を当ておなかの動きを確認します(3)鼻から息を吸っておなかを膨らませます(4)口をすぼめてゆっくり息を吐いておなかをへこませます。おなかの力が入らないようにしましょう(5)10~20回を目安に行ってみましょう

腹筋群(腹横筋)のトレーニング

 (1)両膝を曲げた仰向けで寝ます(2)骨盤を後ろに倒します(腰に手を入れ、腰で手を押しつけるようにすると良いです)(3)ゆっくりと片方の足を伸ばし、その後、元に戻していきます。動作中、骨盤は後ろに倒れた状態を維持しましょう(4)両足を交互に10~20回程度行ってみましょう。

 

筆者=宮武佑輔 狭山中央病院 係長 

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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