児童福祉、医療的ケア強化 創立60周年で新ビジョン〈南山城学園・京都〉

2025年0720 福祉新聞編集部
南山城学園創立60周年記念式典=ホテルグランヴィア京都

社会福祉法人南山城学園(京都府城陽市、磯彰格理事長)の法人創立60周年記念式典が12日、JR京都駅に直結したホテルグランヴィア京都で開かれた。1965年2月の創立から60年。全国社会福祉法人経営者協議会の会長も務める磯理事長は、「人で言えば還暦だが、生涯、青年のつもりで力強く歩み続けたい」とあいさつした。

この道は遠くとも

式典は、オープニングムービーの後「南山城学園の過去・現在・未来~この道は遠くとも」と題した3部構成の特別講演に移った。「この道は遠くとも」は、初代理事長、磯斉志の言葉だ。たとえ困難な時代にあっても、より良い社会を目指す覚悟と希望を象徴する言葉だという。

第1部「過去」では、常務理事で事務局長の西田周二さんが、2015年からの10年間を振り返って講話。(1)利用者様の尊厳を守り、幸福を追求する(2)地域のニーズにパイオニア精神で取り組み、「共生・共助」の地域づくりに貢献する(3)いつでも誰もが安心して利用できる福祉サービスを創造する――。この法人理念に基づいて、行動指針「七つの誓い」を定めたことや、保育所の新設、防災体制の構築を進めたことなどを報告した。

言葉を大切にした法人

第2部「現在」では、「南山城学園の知られざる魅力」をテーマに、作家・文筆家の安達茉莉子さんら3人が鼎談ていだんした。

安達さんは1週間、学園に住み込み、職員へのインタビューを重ねた。その体験が「らせんの日々」(ぼくみん出版会、1800円税別)の出版につながった。言葉を大切にしている法人……それが第一印象だったという。

「福祉は、国民の心の豊かさを取り戻す原動力にもならなければならないという、初代理事長の精神が実践の中で受け継がれて目の前にあった。ものすごいものを見せていただいた」と安達さん。

こどもは社会の未来

第3部「未来」では、「この道は遠くとも~ネクストビジョン2035」をテーマに磯理事長が講演。法人理念が原点で、未来の羅針盤でもあるとした上で、今後10年間のビジョンとして▽暮らしの質の向上▽経営資源の有効活用▽創造性の発揮――の3点を掲げた。

前半5年間の中期経営計画のうち、人材の育成、確保や施設とグループホームの再編、児童福祉分野の事業に絞って説明した。

児童福祉分野では、発達障害などのニーズに対応した認定こども園の開設などを紹介した上、医療的ケアの強化、放課後の居場所づくりなども進めていくことを表明。「こどもは社会の未来だ。特別な支援を必要とするこどもたちが、地域の中で安心して育つ環境を整えることは、社会全体の責任であり、その一翼を担っていく」と述べて、こども事業の拡充に意欲を示した。

最後に、磯理事長は「社会になくてはならない法人」であり続けることを誓い、次なる10年に向けて「変わらぬ理念」と「変わり続ける実践」を両輪に歩み続けることを宣言して、約110人の出席者と共有した。


南山城学園 京都府や大阪府で、障害31カ所▽高齢3カ所▽認定こども園1カ所▽保育4カ所などを運営している。職員約800人。総収入約47億円(2024年度実績)。

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