精神医療のアウトリーチ充実を 厚労省検討会で意見相次ぐ

2025年1007 福祉新聞編集部
アウトリーチについて意見が交わされた

厚生労働省の「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」(座長=田辺国昭東京大大学院教授)は9月29日、精神疾患にかかる医療提供体制の方向性を整理して示した。そのうち「行政が行うアウトリーチ支援」については充実を図るとしたが、複数の委員から「議論が不十分」「別途、議論する時間が必要」との意見が上がった。

医療が必要な状態にありながら受診につながっていない人や治療を中断した人、引きこもりの人に対し、保健所職員らが自宅を訪問する体制をどのように強化するか、具体策が見えないことから、再検討を迫られた。

委員の一人、岡田久実子全国精神保健福祉会連合会理事長は、精神疾患のある人が受診を拒むことに苦慮する家族が少なくない実態を報告し、「医療を含めた多職種チームによる訪問支援体制の充実はとても重要で、今回の整理では不十分だ」とコメントした。

本人の意に反して医療につなげるのではなく、本人や家族の相談に応じてくれることを望んでいるとした。

国立精神・神経医療研究センターの藤井千代氏も「アウトリーチについてはあまり突っ込んだ意見は出せなかった。別途議論する余地があると思う」と述べ、厚労省は「今後の対応を検討したい」と答えた。

看護師付き遠隔医療

厚労省の示した「医療提供体制の方向性」は、入院医療の機能を縮小し、介護や福祉に患者を移すことが柱。それに伴い、看護師をはじめとした医療人材も病院外の拠点にシフトしていく考えだ。

その際、自宅や介護施設で暮らす患者の医療アクセスの向上が大きな課題になる。そこで同日の検討会では、遠隔医療(オンライン診療)に取り組む医師2人が参考人として実践例を報告した。

その1人、山口県内でへき地医療に取り組む原田昌範医師は、医師と患者の1対1ではなく、看護師がそばにいる患者をオンラインで診療することが離島などで有効だとした。

厚労省も看護師付きのオンライン診療の仕組み作りを選択肢に入れて検討する方針だ。

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