医療経営、赤字が深刻 社保審部会で対応議論
2025年09月30日 福祉新聞編集部
物価・賃金の上昇を背景に病院や診療所の経営状況が悪化しているとの訴えが19日の社会保障審議会医療部会(座長=遠藤久夫学習院大学長)で相次いだ。神野正博全日本病院協会長は2024年度の診療報酬改定後、経常利益が赤字の病院の割合が61%に上ったとする調査結果を報告し、「地域医療は崩壊寸前だ。物価・賃金の上昇に対応した診療報酬の仕組みが必要だ」と述べた。
山崎學日本精神科病院協会長も精神科病院の窮状を訴えた。精神科の入院医療費が一般科に比べて低いこと、とりわけ精神科の慢性期の入院医療費は都内のビジネスホテルの宿泊料よりも低いことを資料で示した。
また、精神病床が病院全体の病床の2割強を占める半面、精神科の医療費が、一般科を含んだ医療費全体の約4%にとどまることも説明し、「これは大きな問題だと思うので強調したい」と話した。
医療費を支払う保険者側の米川孝健康保険組合連合会副会長は、医療経営が全体的に厳しい状況にあるとした上で、診療報酬などで手当するにしても、優先順位をつけるべきだと主張。優先すべき領域の例として精神科医療を挙げた。
6月に政府が閣議決定した骨太の方針は、医療・介護・保育・福祉の公定価格について、「制度の特性に応じた定期的な改定ルールを設け、足元の物価上昇に的確に対応できる仕組みづくりを行う」と明記した。
物価や人件費の高騰を受け、石破茂首相は5日、この秋に経済対策を策定する考えを打ち出したが、7日の会見では自身が退陣する意向を表明。医療や介護分野への緊急措置の行方は見通しが立っていない。