国民年金の納付猶予、延長を検討 厚労省「対象は制限」

2024年0927 福祉新聞編集部
猶予制度の延長を議論した年金部会

厚生労働省は9月20日、低所得者の国民年金保険料納付を猶予する制度の期限を延長する案を、社会保障審議会年金部会(座長=菊池馨実早稲田大法学学術院教授)に示した。保険料を負担できるようになってから追納すれば、将来受け取る年金額を増やせる。低年金や無年金の人を減らすのが狙い。2030年6月までの時限措置だが、猶予される人の増加を踏まえ、10年の延長を軸に検討する。ただし、制度の対象者は絞る考えだ。

猶予者増、56万人

厚労省は年末までに年金制度改革の内容を固める予定だ。

20年度末の猶予制度利用者は約56万人で、11年度末より約17万人増えた。30歳以上が4割を占める。就労状況別では無職が約30万人、パート・アルバイトが約19万人。引きこもりの人、メンタルヘルスが不調な人もいるとみられる。

厚労省の見直し案は期限を延長し、世帯主(同居する親)に一定以上の所得がある場合は制度の対象外とするというものだ。

現在、猶予されている人の約1割は世帯主に年収ベースで850万円以上の収入があるため、そうした人は猶予の対象外とし、世帯主に保険料を納めてもらおうという発想だ。

委員からは延長に賛成する意見が上がった一方、世帯主に保険料負担を求める考えには異論が上がった。

猶予制度は、非正規雇用や無職の若者が増えたことを踏まえ、05年4月に開始。30歳未満を対象に10年間の時限措置としたが、その後の改正で対象を「50歳未満」とし、期限も延長を重ねた。

猶予期間は老齢基礎年金の受給資格期間に参入される。猶予期間中に病気や事故で障害を負った場合、要件を満たせば障害年金を受給できる。未納のままよりも利点があると厚労省は説明する。

本人と配偶者の所得で判断して猶予の対象とし、世帯主(同居する親)の所得は問わない。世帯主の所得が一定以上ある人を対象外とする「保険料納付の免除制度」とはこの点が異なる。

障害年金「見える化」

同日の部会で厚労省は、現行の「公的年金シミュレーター」を改め、障害年金の仕組みが簡単に分かるようにする考えも示した。特に若い世代の認知度が低いため、障害の程度、受給要件、請求方法といったことを「見える化」する。

公的年金シミュレーターとは、働き方や暮らし方の変化に応じて、将来受給できる老齢年金額を試算するツール。22年4月から厚労省のサイトで運用が始まり、26年4月にリニューアルする。