救護施設のフードバンク ひとり親向けなど多岐に〈三松会・栃木〉

2025年1011 福祉新聞編集部
子育て世帯向け配布会。多くの人が訪れる

栃木県佐野市の社会福祉法人三松会(塚田一晃理事長)が運営する救護施設「フルーツガーデン」は、救護施設として初めてフードバンクに取り組んだ施設で、生活困窮者、母子家庭、こども向けと多岐にわたり食品支援を展開している。

フードバンク活動は、2018年1月に施設開設後、同年4月から地域における公益的取り組みの一環で開始した。蓼沼美智代施設長は「地域共生社会の実現に向け、地域に根差した施設として認知されるために始めた」と話す。

食品企業や農家、一般家庭から食品の寄付を集め、施設の備蓄庫に保管。同市社会福祉協議会を通じて生活困窮者に配布したり、施設で配布会を開いて直接配布したりしている。米、パン、菓子類、飲料水など、多い時は40トン近くになるという。

珍しいのは、フードバンク専任の職員を採用していることだ。生活保護法に基づく施設での業務には携わらず、市社協への連絡、備蓄庫の整理、補助金の申請などの業務をこなす。

配布会にも工夫

配布会の開催方法にも工夫を凝らした。当初、施設を会場にした配布会では、生活困窮者向けのみ実施していたが、コロナ禍以降はひとり親世帯を対象にしたフードバンクを追加した。こどもの日やクリスマスには、菓子類の配布に加え、輪投げやシャボン玉を楽しめるアトラクションも用意。子育て支援の要素を盛り込んだ。

フードバンク参加者からは感謝の言葉はもちろん、困り事の相談を受けることもある。「深刻なものに関しては、市社協の相談窓口につなげている」と蓼沼施設長は話す。

救護施設は本来、こどもを支援する施設ではないが、フードバンクの継続について蓼沼施設長は「貧困の連鎖を防ぐ意味で、こどもへの支援、その保護者への支援が不可欠。救護施設が行う意義はある」と力を込める。人件費だけでなく、備蓄庫の維持費も持ち出しのため、法人経営への影響は少なくない。しかし、「フードバンクを実施していることが広がることで、地域の相談拠点のような施設になれれば」と蓼沼施設長は話している。

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