「差額支給、速やかに」 生活保護減額違法判決、原告が専門委で意見

2025年0908 福祉新聞編集部
原告側の7人が意見を述べた(左から2人目が新垣さん)

2013~15年の生活保護費引き下げを違法とした最高裁判決を受け、厚生労働省は8月29日、判決への対応を検討する専門委員会の第2回会合を開いた。大阪、愛知の原告や弁護士ら計7人が参考人として招かれ、意見を述べた。

原告の新垣敏夫さん(71)=大阪=は「私たちの生存権が侵害された状態を解消するため、速やかに差額を払ってほしい」と述べ、専門委員会については「あらを探して最高裁判決を骨抜きにしようとしているのでは」と懐疑的な見方を示した。

7人は意見陳述を終え、委員からの質問に回答した後、退室を求められた。退室後の議論は、判決の法的な解釈が中心となった。

太田匡彦東京大大学院教授(行政法)は判決について「差額をそのまま払えということではなく、もう一度考え直せと差し戻したものだ」と論評した。

判決は引き下げを取り消したものの、改めてデフレ調整することまでは妨げてはいないとの見方を提示。しかし「実際には下げるのは厳しいのではないか」と述べた。

興津征雄神戸大大学院教授(行政法)も同様の見解を述べた上で「ゆがみ調整についてはやり直す余地がある」とした。

専門委は学識者9人で構成。減額分を追加支給する場合の対象者の範囲や支給額などを検討する。

厚労省は一般低所得世帯との格差を是正する「ゆがみ調整」と、物価下落を反映する「デフレ調整」を根拠に、13年からの生活保護費の基準を段階的に引き下げた。

最高裁は6月27日の判決でデフレ調整を違法、ゆがみ調整を適法と判断し、減額処分を取り消した。原告による国家賠償請求は棄却した。

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