生活保護減額訴訟 津地裁では原告勝訴

2024年0307 福祉新聞編集部

国が生活保護費の基準額を2013~15年に引き下げたのは違法だとして、三重県内の受給者が、自治体の減額処分の取り消しを求めた訴訟の判決が2月22日、津地裁であった。竹内浩史裁判長は減額の背景に「自民党の選挙公約への忖度そんたくがあったと推認できる」と指摘。厚生労働大臣の裁量権の乱用を認め、減額は違法だと判断して処分を取り消した。

 

選挙公約とは、12年の衆院選で「生活保護費の1割減」と掲げていたことを指す。基準額の引き下げをめぐる裁判で、選挙公約との関係を認定したのは初めて。判決は「政治的方針を実現しようとしたものとみるほかない」と指弾した。

 

引き下げに対する憲法判断は示さなかった。判決は、最低限度の生活を設定するには高度の専門技術的な考察とそれに基づく政策判断が必要で、厚労大臣はそうした知見を無視または軽視して強行したと断じた。

 

一方、基準額引き下げの根拠とした総務省の統計については「厚労省において不適切に利用・改変した」と批判した。原告側弁護団は同日の声明で「個人の権利を保護する砦とりでとしての司法の役割を果たしたものであり、極めて高く評価できる」とした。

 

同様の訴訟は全国29地裁で起こされ、地裁判決は26件目。減額処分の取り消しは15件目となった。