救護施設がまちの「サロン」に 入所につながった事例も

2023年0412 福祉新聞編集部
サロンで振る舞われる軽食

青森県玉葉会(木村敏昭理事長)が運営する救護施設「白鳥ホーム」。赤い羽根福祉基金を活用し、まち中に「サロンスワニー」を設けた。入所者だけでなく、地域移行した人や地域の人も集う場所として認知されつつある。2019年度から3年間の助成事業の成果を聞いた。

 

法人のある青森県平内町は、陸奥湾に面するホタテの養殖が盛んな人口1万人ほどのまち。入所者の平均年齢は68歳で最高齢は90歳。

 

施設定員は130人。2階部分を自立できる入所者(約100人)が利用し、1階部分を車いすが必要な要介護者棟として約30人が利用している。

 

他の救護施設と同様に高齢化が進むが、町内に特別養護老人ホームは1カ所しかなく、施設が「終の棲家」になるケースもある。

 

サロンは、町役場近くの「地域交流センターはくちょう」1階に開設した。地域交流センターができたのは14年4月。土地、建物ともに法人所有で、地域住民向けの相談所や障害者の日中活動ができる場所を兼ねる。同法人が地域貢献の一環で運営している。

 

入所者やグループホーム「ハイツ花つばき」で暮らす人が、外で気軽に立ち寄れる「居場所」がまちに少なかったことがサロンを始めたきっかけだ。

 

サロンは、交流センターの1階部分を利用。16人ほどが座れるスペースがあるほか、簡単な料理を作れるキッチンがある。

 

オープン当初の19年10月から月に2回程度、定期的に食事会を開いた。出入り自由、食事代も無料にしたのが特徴で、地域からも含めて30人ほど集まったことも。

 

順調にサロンを運営していた矢先、新型コロナウイルスの影響を受けた。20年2月以降、人の密集や飲食の提供が困難に。そのため、白鳥ホームの入所者が日中活動で作った編み物や地域の人の作品などを飾るギャラリーに形態を変更してサロンの運営を続けた。

 

感染者数が落ち着いてくると、作品展示会に訪れた人に利用者が手伝ってカレーなどの軽食を無料で振る舞うようになり、自然と地域の誰かが集う「居場所」として根付いていった。

 

法人理事で相談員も務めサロンに常勤する田中洋子さんは「コロナの影響で思った通りには活動を行えませんでしたが、居場所づくりはできたかなと思います」と振り返る。

打ち解けて悩みも

サロンが地域に認知され始めると、病気を気にして閉じこもりがちだった人や、引きこもりの家族を抱える人なども集うようになった。

 

田中さんは「『普段の食事はどうですか』など、何気ない会話を心掛けています。何回か通ううちに打ち解け、ポツリと悩みを教えてくださる人もいました」と話す。

 

高齢の親一人、子一人世帯がサロンを利用した際に、こどもに軽度の精神障害があることが分かり、白鳥ホームへの入所につながったケースもあった。

 

3年間での助成金は994万円。約600万円で玄関を大通りに面するための工事をしたほか、食事代や光熱費などに充てた。23年度には、当初行っていたサロンとしての活動を再開したいという。

 

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