盲ろうトライアスリート、中田さん 省庁幹部に講演
2025年11月26日 福祉新聞編集部
盲ろうトライアスリートの中田鈴子さん(京都府在住、59)が11日、環境省で行われた「ユニバーサル社会を創造する事務次官プロジェクト」で講演した。プロジェクトは竹中ナミ社会福祉法人プロップ・ステーション理事長と、村木厚子全国社会福祉協議会長の発案で19年前に始まり、毎月1回開かれている。同日は環境、厚生労働、国土交通、防衛省の事務次官ら計6省の幹部が参加した。
中田さんは生まれつき耳が聞こえず、出産後の30代で視力を失った。会話は話し手の手話を手で触って読み取る触手話で行う。45歳の時、体調不良を克服するためマラソンを始め、トライアスロンは47歳になって初めて挑戦した。
これまでフルマラソン60回、トライアスロン50回を完走。5月には初めて海外(ベトナム)のトライアスロン大会に参加。大会前に病気になり、十分な練習ができなかったが、現地の人の配慮や応援も受けて完走。その姿は多くの感動を呼び、希望を与えた。
また、働いている就労継続支援B型事業所「さんさんグリーン」(大阪府)では、手の感覚だけで茶の新芽摘みや鷹の爪の軸取りを手際よく行い、能登半島地震の被災地支援のため募金を集めて寄付した。
中田さんは「さまざまな出会いや支援に常に感謝している」「盲ろう者の存在を知ってもらいたいとの思いで競技を続けている」と話し、「盲ろう者は周りからできないと思われ、制限されるが、少しのサポートと理解があればできることがある。取りあえずやってみよう。できるようになるかもしれない」と伝えた。
参加した省庁の幹部は「仕事を忘れて感動した」「いろんな人に勇気を与えている」などと話し、音も光もない中での想像を超えた中田さんの活動に胸を打たれた様子だった。

