アルコール依存症の自助グループAA50年で記念集会 回復の喜びつなげる
2025年04月09日 福祉新聞編集部
アルコール依存症の人による自助グループ「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」が日本で活動を始めて50年がたつことを記念する集会が3月28~30日、さいたま市内で開かれた。テーマは「つなげる手、つながる心、その先にある未来」。国内外から約2300人が参加した。
初日の開会式では各地のAAグループが順次登壇し、他者とのつながりで飲酒の止まった喜びをアピール。2日目は複数の分科会が開かれた。特に注目されたのは、主催者AA日本常任理事会のアーカイブ委員会による「日本のAAを振り返るフォーラム」だ。
AAで使うテキストを手書きで日本語訳した貴重な一冊や、50周年の記念誌が紹介されたほか、揺籃期を知る人が講演した。
さいたま市の元福祉部長、井上茂さんもその一人だ。埼玉県大宮市(当時)のケースワーカーだった1975年、AAを日本に紹介したミニー神父と出会い、AAと関わり続けてきた。
「AAメンバーを見て、アルコール依存症は回復できる病だと確信を持てた。回復の道を歩む人に会いに行くことを通して希望のメッセージを受け取ることは、援助職にこそ必要だ」と語った。
AAは35年にアメリカで誕生し、日本では75年3月、東京都大田区蒲田で始まった。無名の当事者が「12ステップ」と呼ばれるプログラムに沿って自身の経験を語る「ミーティング」が主な活動だ。
教会や公民館などを借りて活動する例が多い。現在、国内に約580のグループがある。メンバーは約5500人で、自宅で家族と暮らす人が半数だが、社会福祉施設に入所中の人もいる。
アルコール依存症の人を受け入れる救護施設「救世軍自省館」(東京都)でも入所者がミーティング会場に出向いてきたが、近年は入所者の重症化に加えコロナ禍で、参加が途絶えているという。
自省館の髙橋正隆施設長は「認知症などにより中長期の支援が必要な人が増えている。AAにうまくはまらない人もいるが、はまる人にはとても効果がある。6月からは数人がAAに通う見込みだ」と話した。