旧優生保護法は違憲 最高裁判決、除斥期間は認めず

2024年0713 福祉新聞編集部
勝訴の旗をかかげて喜ぶ原告団

旧優生保護法(1948~96年)に基づき不妊手術を強制された障害者らが国に賠償を求めた5件の訴訟について、最高裁判所大法廷(裁判長=戸倉三郎長官)は3日、同法を「個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する」とし、憲法違反の判決を言い渡した。国が主張していた、20年たつと賠償請求できない「除斥期間」の適用については「著しく正義・公平の理念に反し、とうてい容認できない」とし、国に賠償を命じた。

5件のうち4件は各高裁で障害者らが勝訴し国が上告していたが、棄却されたことで判決が確定。1件は除斥期間を適用して障害者らの請求を破棄していたが、審理を高裁に差し戻した。今後、全国で39人が各地方裁判所などに提訴している同様の訴訟にも影響が及ぶことになる。

判決では「正当な理由に基づかず特定の障害者らを差別し、重大な犠牲を与えた」と障害者差別についての言及や、一時金支給法(2019年4月成立)により国は損害賠償責任を負わないと主張し続けたことが問題解決を遅らせたとの指摘もあった。

勝訴判決を受けて原告の障害者らは喜びの声を上げた。北三郎さん(81、活動名)は「こんなにうれしいことはない。(不妊手術を受けた)2万5000人や、まだ声を上げられていない被害者に勝訴したことを伝えたい」と話した。

岸田文雄首相は同日違憲判決を受けた会見で「真摯しんしに反省し、心から深くおわびする」と述べ、原告の障害者らと17日に面会する。また、9日には超党派の議員連盟が開かれ、作業チームで被害者補償の対象や金額など具体的な制度設計を検討する方針を決めた。違憲判決から約1週間で被害者救済などに向けた動きが一気に進んだ。

公費で手話通訳、初配置

裁判では傍聴する障害者へのさまざまな配慮がなされた。初めて公費で手話通訳者が配置され、戸倉裁判長は分かりやすくした判決要旨を読み、内容を大型モニターに映した。12席の車いす用スペースが設けられ、人工呼吸器の電源も確保された。