厚労省で73年営業 友愛十字会運営、障害者が働く書店

2024年0703 福祉新聞編集部
中央合同庁舎5号館地下1階にある友愛書房

厚生労働省のある中央合同庁舎5号館(東京都千代田区)の地下1階に、社会福祉法人友愛十字会(蒲原基道理事長、東京都世田谷区)が運営する「友愛書房」がある。1950年に身体障害者福祉法22条に基づいて全国で初めて設置された売店だ。約40平方メートルの店内には雑誌や専門書など約8000冊が並び、長い間利用されている。

同法22条は「国、地方公共団体は身体障害者から申請があった場合、公共施設内での売店の設置を許すよう努めなければならない」と規定している。

法人は50年にハワイ在留邦人の寄付金で身体障害者(傷痍軍人)の更生自立を目的に設立されており、書店も同邦人団体役員、川上政光個人の寄付金を受けて開店に至った。そのため当初の店名は「川上堂」で、50年12月の開店式には黒川武雄厚生大臣らが臨席した。酒井健治常務理事は「戦後の復興間もない時期に役所内で取り組んでいたのは驚きだ」と話す。

現在、山本恭子店長、勤務約20年の女性、身体障害のある男性の3人が働く。客数は年約3000人。厚労省などの各省庁、厚労省職員個人が大半を占める。例えば、国政選挙があると国会議員が変わるため「政官要覧」が売れるなど、時期によって売れ筋も異なるという。

ただ、2008年の元厚生事務次官宅襲撃事件を機に、庁舎への出入りが規制されたことで客数、売り上げが減少。昨今の物価高もあって運営は厳しい。酒井常務理事は「障害者総合支援法の就労系事業ではないため公的報酬はないが、法人設立すぐに始めた事業であり継続していきたい」と話す。

営業は平日午前9時~午後6時。