精神医療国賠訴訟 「病院には戻らない」 原告尋問、6月に結審

2024年0314 福祉新聞編集部
弁論の内容を報告する古屋名誉教授(右から2人目)と原告の伊藤さん(左から2人目)

精神科病院の入院期間が38年に及び、地域で生きる権利を奪われたのは国の不作為が原因だとして、統合失調症の伊藤時男さん(73、群馬県)が国家賠償を求めた裁判の第15回口頭弁論が2月27日、東京地裁で開かれた。

 

伊藤さんは弁護団からの主尋問、被告(国)からの反対尋問に答え、「もう病院には戻りたくない。社会的入院の人を少しでも減らしたい」と訴えた。次回期日は6月18日で、同日で結審する見通し。精神科病院での長期入院をめぐる初めての国賠訴訟は最終局面を迎えた。

 

争点の一つが医療保護入院(非自発的入院)の違法性だ。同日の尋問では、入院中の伊藤さんの治療や生活環境の事実関係を中心に、原告代理人、国が伊藤さんに確認した。

 

伊藤さんは退院を願い出たものの病院に聞き入れられず、徐々に退院意欲を失っていったと陳述。アパート暮らしをする今の生活から、病院に戻ることは考えられないとした。

 

提訴は2020年9月30日。訴状によると、伊藤さんは福島県内の精神科病院に1973年から38年間入院し、そのうち30年間は父親の同意による医療保護入院だった。

 

60年代以降、国際社会から改善を求められ、国は長期入院を解消する義務があったにもかかわらず放置したとして、伊藤さんは慰謝料など計3300万円を求めた。

 

国は、原告の主張は国賠法上の請求に当たらないと反論し、長期入院是正の不作為についても争っている。

 

3年半に及ぶ裁判の経過は精神医療国家賠償請求訴訟研究会(代表=古屋龍太・日本社会事業大名誉教授)のホームページや伊藤さんの近著『かごの鳥』(やどかり出版)に記載されている。