障害者の成長の場に 農福連携協会が「農園型」の問題点などで報告書

2024年0309 福祉新聞編集部

 企業に働く場として農園を貸し、障害者を紹介して業務も提供する「農園型障害者雇用」(農園型)について、日本農福連携協会(皆川芳嗣会長理事)の研究会は利点や問題点、今後の展開などを報告書にまとめた。農園型について全国組織が整理したのは初めて。障害者の成長とやりがいの場となる取り組みとして進める必要があると提言した。

 

 昨年3月末時点で提供する企業(提供企業)は23社、提供企業を利用する企業(利用企業)は1081社、利用企業に雇用されて働く障害者は6568人いる。近年急速に広がっているが、企業が障害者雇用率を達成するためだけの手段だとして否定的な意見も出ている。

 

 農園型の利点は、障害者は福祉的就労を上回る最低賃金以上の収入が得られる。ノウハウのない利用企業は容易に障害者雇用ができ、提供企業は農園リース料などで収益を確保できることなどがある。一方、問題点は、農園の生産量が少ないため賃金の財源になっておらず、障害者はやりがいを持てない。利用企業は障害者雇用に対して自社の取り組みとしての意識が薄く、障害者と一緒に働く社員の知識も不足している。十分な支援をしていない提供企業もあり、障害者の職業的成長が妨げられている。

 

 報告書は提言として、提供企業は障害者雇用の本質に立ち返り、やりがいや成長を感じられる仕組みをつくり、利用企業は人材戦略の中で捉え、責任を持って雇用管理を行うよう求めた。さらに国には障害者雇用率の「数字」だけでなく「質」を加味するよう進言した。

 

 皆川会長理事は2月29日の報告会で「農福連携と企業側の連携をもう一段高める努力をしなければいけない」と話し、報告書を良好な障害者就労の啓発などに活用する。研究会のオブザーバーには厚生労働、農林水産両省も参加した。